【撮らなきゃ損!】第2回「機材セッティングと撮影準備」

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概要

 星ナビ連動企画「撮らなきゃ損!」第2回では、三脚の据え付けからはじまりピント合わせ、極軸補正など「撮影の一歩前」まで準備を整えていきます。 さてさて、新人編集員の石川は「上山先生」指導のもと無事セッティングすることができるのでしょうか…?

機材のセットアップをしよう!

第1回で「都会でも星雲が撮れる」ことがわかりました!

※ 第1回記事 → 第1回「都会でも星雲・星団が撮れる!」

今回は機材のセッティングからピント合わせ、極軸補正までいっきに説明していこう。

 まず三脚を据え付けます。ビルの屋上は防水処理のコーティングが施されているので、これを傷つけないように、小さい円板(図1)の上に三脚を据え付けます。

図1:木製の円板。ホームセンターなどで1枚あたり数百円程度で手に入る。地面が土のときも沈み込みの低減に役立つぞ。汚れてもよいのでどんどん使おう。

 北極星の位置を確認して、三脚の位置を決めます。北の空が見えない場合は、コンパス(最近はスマホアプリもありますね)でおおよそあたりをつけておくとよいでしょう。赤道儀が取り付けられたら、バランスウェイト、鏡筒の順に取り付けます。

赤道儀やバランスウェイトは重いものなので、持ち上げるときは注意しなきゃ…!

 続いてカメラの取り付けですが、その前にカメラ本体の設定を確認します。最低限確認しておきたいのが以下の項目です。

  1. パワーオフ時間は60分以上。操作・撮影している最中にカメラがパワーオフすることを防ぐため。
  2. ホワイトバランスを太陽光にする。通常の撮影ではオートになっているはずですが、オートにすると撮影毎にカラーバランスが変わってしまう事があるので、これを防ぐため。
  3. カメラの日時を合わせておく。これがずれているとあとで撮影画像を確認するときに正しい撮影時間が分からなくなるため。

 さあ、設定できましたか?それではいよいよ鏡筒にカメラを取り付けましょう。

マウントが「カチッ」となるまで、しっかり回して取り付けないといけませんね!

カメラのメーカーによって、回す方向が違うこともあるので暗闇の中でも迷わず操作できるように事前に確認・練習しておこう!

 機材を取り付けたら、電源などの配線周りを整備します(図2)。ここで、赤道儀やカメラのケーブルをギアボックス(GearBox)に接続しておきましょう。

図2:機材のセッティング完了。毎回使用する機材が決まってきたら、ケーブルをまとめるなど「事故を防ぎ」「撮影しやすい」スタイルを究めてみよう。

 三脚、赤道儀、望遠鏡にガタが無いようしっかり組付けられるかが、撮影がうまくいく第一歩です。また赤経、赤緯クランプを緩めて、バランスが取れるようにウェイトの位置を調整します。クランプを緩めても少し力をかけるだけで回るようになるのが理想的です。

とはいえどうしてもバランスが狂っていることもありますよね。

どうやってもバランスをとることができないときは、できるところまで調整して、あとはモーターに頑張ってもらおう!

「理想の追い込み」と「現実の調整範囲」もバランスが大事ですね…!

ピントを合わせよう

次はピント合わせですね。

慣れるまでは難しいけど、何度か挑戦してコツをつかもう!

 望遠鏡のピントは外気温で大きく変わってしまうので、使う度にピントの確認・調整が必要です。

 外気温が大きく違う場合は、望遠鏡が外気温になじむまで、ピント位置が少しずつ変わっていきますので、使い始めてから30分、1時間といったタイミングでピントの再確認が必要です。家や車の中から望遠鏡を取り出したら、鏡筒内部が外気温に馴染むまでしばらく置いておくのもおすすめです。

 はじめて望遠鏡でピントを合わせる場合は、まだ明るいうちにカメラの液晶モニタで(一眼デジカメの場合はライブビューにして)、遠くの地上風景を見ながらおよそのピントを合わせておきます。

あれれ、望遠鏡を星空に向けているのにカメラの液晶モニタが真っ暗です…。

 ピントが合っていない場合、星空に望遠鏡を向けても星は写りません。その場合は、ステラショット2のライブビュー画面(連続撮影モード)を表示します。ISO感度は最大感度、露出時間は1秒から4秒に設定します。これで、星が大きな円になって写るのがわかります。

 あとはドロチューブを調整して、この円が小さく点状になるように調整します。露出に時間をかけているので、ドローチューブの操作によるピントの変化にタイムラグが生じます。少しずつ動かして変化をしっかり確認しながら調整をしていきましょう。

星が点状になりました!

 星が点状になるようにピントが調整できたら、撮影用にさらにピントを正確に合わせます。

 ここではピント合わせに明るい星を使います。星図上で見えている1~2等星ををクリックして、導入してみましょう(図3)。

図3:ステラショット2で明るい星を導入。

導入完了、テスト撮影っと…!あれ?細かな星は写ってますが、導入したはずの明るい星が画角に入っていません~!

そんなときはステラショット2の「導入補正」機能を使って望遠鏡の位置を微調整しよう。

 「導入補正」は、撮影した画像の恒星を認識し望遠鏡が実際にどの方向に向いているかを正確に解析します。その上で自動で目標の天体を再導入してくれる機能です。「導入補正」による再導入が終わったら、再度撮影してみましょう。明るい星が画面中央に映っているはずです。

どまんなか!

 明るい星が画角の中に写っていたら、ライブビュー画面(通常モード)を開きます。ここで、望遠鏡の先端に「バーティノフマスク」を取り付けます(図4)。

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バーティノフマスクを付けると、先ほどの明るい星の形が変化しました!

 バーティノフマスクをつけると、ライブビューの星の両側に「ヒゲ」が出現します。

図5:バーティノフマスクを付けて明るい星をライブビューで確認。画像はほぼピントが合った状態。

 ここで、星が中央になるようにライブビューを拡大します(図5)。  「ヒゲ」は猫のヒゲのように左右それぞれ3本に分かれているのが分かります。ここでピントを変えると3本のうち真ん中のヒゲが残り2本のどちらかに近づいていきます。この真ん中のヒゲが、のこりの2本のちょうど真ん中になるところがピントが合った状態です。

ピント合わせが終わったらバーティノフマスクを外すことを忘れないようにしたいですね。

ピントがあったら、望遠鏡にピントの位置を記録しておくといいよ。ドロチューブに油性ペンで印をつけるとかマスキングテープを貼っておくと、次回からピントがほぼ合うところまですぐに調整できるからおすすめだよ。

ステラショット2で楽々極軸補正

 撮影前の最終段階。ここでは、追尾精度をよくするため「極軸補正」をしましょう。

極軸望遠鏡を覗くのって結構姿勢がきついですよね…。

おやおや若いのに。「ステラショット2」の「極軸補正」を使うと PC 画面を見ながら楽な姿勢で合わせられるから便利だよ。

 極軸補正では、その場で撮影した画像を解析して極軸のずれを検出するので、まずは、画像解析ができるよう、カメラの露出の設定をします。

図6:まずは試し撮りで星が写る露出を探ろう。
  1. 天頂付近に望遠鏡を向け、カメラパネルに切り替えて、最大感度、露出1秒、画質はJPEGの最高画質に設定します。
  2. 設定ができたら1枚撮影します。撮影が終わると自動的に再生画面に切り替わります(図6)。
  3. 画面下のアイコンをクリックしてヒストグラムを表示させます。
  4. ヒストグラムの山が、左から1/3から1/4になるのが適正露出です。もし露出が多すぎる場合は、感度を低くします、露出が足りないときは露出時間を多くします。

星がよく写るようになりました!ヒストグラムもいい感じです!

 適正露出になったら、プリセットに「テスト」や「試写」といった名称で登録しておきましょう(図7)。

図7:撮影設定画面。撮影時の画像ラベルを「テスト」にセットしておくと、あとあと画像の整理がしやすいぞ。

さあさあ、ここまでは極軸補正の下準備。いよいよ極軸補正をやってみよう!

 いよいよ極軸補正を行います。

  1. まずは望遠鏡を極軸補正の開始位置に向けます。なるべく星の写りやすい高いところを選びましょう(図8)。
図8:極軸補正の開始位置(黄色いエリア)。あまり極に近いと計測の精度が出にくいので、天の赤道付近がおすすめ。さらに、極軸補正の計測中に望遠鏡は地平方向(高度が低くなる方向)へ赤経で2時間分動くので、それを考慮しても十分星が写るエリアが望ましい。

2. 望遠鏡を極軸補正の開始位置に向けたら「極軸補正」ボタンをクリックして「極軸補正」ダイアログを開きます(図9)。

図9:極軸補正ダイアログ。
  1. 極軸補正ダイアログの撮影設定で、先ほど設定したテスト撮影用のプリセットを呼び出します。
  2. 「開始」をクリックすると、「撮影」と「望遠鏡の導入」を繰り返しながら計測を実行します。
  3. 「開始」後は全ての動作が自動で行われます。2,3分程度で計測が終わります。 ※ 極軸補正の開始位置に子午線ギリギリの場所を選ぶと、恒星時追尾により気づかないうちに子午線をまたいでしまい、ドイツ式赤道儀では鏡筒が逆向きに動く可能性があります。極軸補正中は必ず望遠鏡の動く向きを確認し、すぐに停止できるよう注意をお願いします。
  4. 計測完了後、グラフに現在の極軸のずれが表示されます。
    • 緑の軸の中心;天の北極
    • 赤い × 印:現在の赤道儀の極軸の向き
    • 白い円:ずれを収める目安の範囲(円の半径=接続中のカメラの画角の短辺)
  5. グラフを確認し、極軸のつまみを調節します。
  6. ずれが白い円の中に収まるまで 4 ~ 7 を繰り返します。
  7. ずれが白い円の中に収まったら、星図上で高度60度以下の明るい星を導入します。
  8. 次にライブビューに切り替えると、導入した明るい星が中心からずれて見えています。
  9. この明るい星が画面中央になるように、極軸の調整ネジをまわして調整します。
  10. 明るい星が画面中央に表示されれば調整完了です。

なるほど、一度手順を行ってみるとほとんど自動で動いてくれるので簡単ですが、文章にすると伝わりにくいですね…。

こんど新人くぼたに動画で説明してもらおう!

百聞は一見に如かず、ですね!しかし、自動で計測してくれるのは便利なのですが、これは何を行っているのですか?

この計測方法はアストロアーツが独自に考えた方法で、しっかり説明しようとすると数式がいっぱい出てくるので…。

要するに…?

要するに、3枚の星空の写真から恒星の「ずれ」を検出して、その量を計測。それを、ごにょごにょと計算式に応用することで、「真の北極の位置」と「現在の赤道儀の極軸の向き」を算出しているんだ。

なるほど、ステラショット2が赤道儀に「君、極軸がこんだけずれてるよ~」と教えてあげることで、きっちり調整できるようにしているんですね!

そうなんだ。「北極星」いらずの極軸合わせだから、南向きのベランダなど、おうちで撮影するにも便利な機能だね。

ここまでできたら撮影の準備はバッチリですね!

次回はいよいよ実際の撮影だ!お楽しみに!

星ナビ2020年7月号もよろしくネ!

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