【ステライメージ10】彗星の画像処理 – 徹底ガイド

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実演動画

本記事の「メトカーフコンポジット」と「仕上げ」を、トークと操作実演でじっくり追うことのできるYouTube動画をご用意しました。

細かいファイル操作や各種画像処理機能の勘どころなど、テキストだけではつかみにくいポイントをソフトウェアの画面や質問を伴う会話とともに確認できます。手順を再確認してしっかりと掴みたい方におすすめです。ぜひご覧ください。

メトカーフコンポジットとは

彗星は背景の恒星に対して高速で移動していくため、長時間露光をすると像が流れてしまいます。しかし、逆に露光時間を短くすると淡い尾は写りません。そこで考案されたのが、短時間露光した多数の画像を、彗星の移動量を計算して重ね合わせる「メトカーフコンポジット」です。

メトカーフコンポジットを使えば、あたかも彗星を追尾して露光したかのように彗星本体が止まった画像にすることができます。本記事では、その使い方を詳しく解説します。

準備するもの

必要なソフトは次の二つです。

  • ステライメージ10(製品版)
    ※ライト版ではメトカーフコンポジットができません。
  • ステラナビゲータ12 または ステラショット3
    ※ステライメージ10は、ステラナビゲータまたはステラショットが持っている彗星データを使って位置計算を行います。
    ※ライト版のステラナビゲータやステラショットではデータを使うことができません。また、サポート期間が終了している場合は最新の彗星データに更新できません。

データ更新を忘れずに

彗星データは定期的に更新されています。今回例として使うレモン彗星は2025年1月に発見されたため、初期状態のステラナビゲータ/ステラショットには含まれていません。メトカーフコンポジットを行う前に、必ずデータ更新を実行して最新の彗星データを取得してください。

次のメニューまたはボタンからデータ更新ダイアログを呼び出します。

ステラナビゲータのデータ更新メニュー
ステラショットのデータ更新ボタン

このようなデータ更新ダイアログが表示されます。

「データ更新」を呼び出したところ

「更新を実行する」をクリックするとデータ更新がはじまります。

データ更新中……

「更新が完了しました」と表示されたら「閉じる」ボタンでデータ更新ダイアログを終了します。

更新が完了したら「閉じる」ボタンで終了する

メトカーフコンポジットの手順

コンポジットパネルの準備

ステライメージでコンポジットパネルを開き、ライトフレームやダークフレームなどを読み込みます。ここまでは通常のコンポジットと同じです。

ステライメージ – コンポジットパネル

今回例として使用する画像は、ライブ中継を行いながら撮影したものですが、慌てていたためか、RAW画像を撮り忘れてJPEGのみになっています。しかし、コンポジットすることである程度の強調には耐えうると信じて、処理を進めてみましょう。

ステラショットなどで撮影したJPEGファイルのメタデータには撮影日時が入っていないため、従来はメトカーフコンポジットができませんでした。しかし、ステライメージ10.0eアップデータからは、ファイルの作成日情報から撮影日時を推定して処理できるようになりました。

メトカーフ設定

「コンポジット方法」「メトカーフ」に変更し、次に「設定」ボタンを押します。彗星名(名称や記号で検索可能)、撮影に使うレンズや望遠鏡の焦点距離、カメラのメーカーと機種を設定します。目的の彗星が見つからない場合は、データ更新が正しく行われているか確認してください。

メトカーフ設定ダイアログ
メトカーフ設定 – 天体選択ダイアログ

準備ができたら「実行」ボタンでコンポジットを開始します。処理後に彗星が止まり、恒星が流れていれば成功です。1枚だけの画像と比較すると、尾の構造がはっきりしています。

メトカーフコンポジットのできあがり(左:メトカーフコンポジット処理後の画像、右:処理前の画像)

メトカーフコンポジットによって彗星を止めることができたので、ここからはその姿を美しく仕上げていきましょう。「画像ウィンドウで編集」ボタンで詳細編集モードに切り替えます。

コンポジット結果の確認

レベル調整

まずはコンポジットした画像に余計なものが写り込んでないか確認しましょう。シャドウ部(尾の淡い部分)がよく見えるようにレベル調整します。人工衛星や航空機の軌跡が写っていることがあります。

恒星や彗星とは別に、人工衛星や航空機の軌跡が線上に写り込んでいる

軌跡を消したい場合は、コンポジット方法を以下のいずれかに変更します。

  • 加算平均(σクリップ):画質の劣化は少ない、処理が重い
  • 加算(コスミカット):高速、大量枚数向け

目安として、10枚以下はσクリップ(偏差1.5)、10枚以上はコスミカットが適しています。

ここではコスミカットで処理をしてみました。飛行機の軌跡が消えていることがわかります。

加算(コスミカット)でメトカーフコンポジット

仕上げの調整

周辺減光の補正

レベルを調整し、周辺減光がわかりやすい状態にします。次に「周辺減光/カブリ補正」機能でRGBごとにポイントを指定し、画像の明るさの勾配をフラットにして色かぶりを取り除きます。

周辺減光/カブリ補正でポイントを指定してフラット化(適用前)
周辺減光/カブリ補正でポイントを指定してフラット化(適用

デジタル現像

尾の淡い部分を出しつつ彗星頭部の白飛びを防ぐために、デジタル現像を実行します。黒縁が出ない程度に強度を調整します。色彩強調マスクは s, s, s にすると色が強調されます。

デジタル現像(適用前)
デジタル現像(適用

ピンポイント・トーンカーブ調整

尾の淡い部分を指定して選択的に明るくし、尾の存在感を強調します。

ピンポイント・トーンカーブ調整(適用前)
ピンポイント・トーンカーブ調整(適用

マトリクス色彩補正

色バランスを整えることで、青いイオンテイルが自然に表現されます。

マトリクス色彩補正(適用

スマートマルチバンド・シャープ

細部を際立たせるためにシャープネス処理をかけ、コントラストを上げます。

スマートマルチバンド・シャープ(適用前)
スマートマルチバンド・シャープ(適用

輝度/カラーノイズ低減

まばらにランダムな色がノイズとなって目立ってきたので、カラーノイズ低減で抑えます。

輝度/カラーノイズ低減(適用前)
輝度/カラーノイズ低減(適用

仕上げ

これで、彗星を止めて尾の構造をはっきりと描き出すことができました。

彗星の頭部と尾をバランスよく配置する構図を考えながら、画像をトリミングします

じっくり鑑賞

画像処理が一段落すると「見えなかったものが見えてきた!」「SNSでシェアしたら『いいね』をもらえた!」と一息ついてしまいがちですが、ここからが楽しいところです。仕上がった画像をゆっくり眺めてみてください。

彗星の頭部では、核から蒸発した水や有機物などがガス状になって広がり、コマと呼ばれる構造を作っています。この部分だけでも地球の10倍から100倍の大きさがあります。

このコマからイオン化した原子が太陽風に流されて、太陽とは反対の方向に一直線に伸びていいるのがイオンテイルです。このイオンテイルは青い色をしているのが特徴です。

画像をよく見ると、核から放出される物質の量の変化や太陽風、磁気の時間変化の影響で、イオンテイルが少しよれたように見えるのがわかります。太陽の活動が活発な時によくみられる現象です。

イオンテイルに対して、ほうきのように末広がりに広がっているのがダストテイルです。文字通り彗星の核から放出された、砂粒のようなダストが広がったものです。このダストの粒の1つひとつが、軌道上の彗星の速度、太陽の重力、太陽の光による圧力などの影響をうけて、彗星本体とは異なる新たな軌道上を動いていきます。そのため、ダストテイルは微妙にカーブした形になって見えます。

彗星は、太陽からの距離、彗星の核に含まれる物質の成分、太陽からの太陽風や磁気などの影響を受けて刻々と変わっていきます。一期一会の彗星の姿をとらえて、太陽系の放浪者の姿を楽しんでみましょう。

メトカーフコンポジットがうまくいかない場合

メトカーフコンポジットは、通常のコンポジットよりも複雑な処理を行っているため環境や設定、データによっては正常に動作しない場合もあります。その際、まずは「ステライメージ(画像処理)ヘルプ」をご参照ください。

主なトラブルシューティング

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