【ステライメージ10】銀河の画像処理 – M31(アンドロメダ座大銀河)

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肉眼で見える最遠の銀河 ― アンドロメダ座大銀河

気軽に肉眼で見られる中で最も遠い天体――それが M31、アンドロメダ座大銀河です。
私たちの銀河系のすぐ外に位置する巨大な銀河で、条件の良い空の下では、肉眼でもその存在を確認することができます。見かけの大きさは満月のおよそ5倍にも達し、天の川がはっきりと見えるような暗い場所であれば、秋の星座アンドロメダ座の腰のあたりに、淡くぼんやりとした光の広がりとして見つけることができるでしょう。

このように非常に大きく、しかも明るい天体ではありますが、写真に撮ると必ずしも期待どおりの迫力が得られるわけではありません。撮影直後、いわゆる「撮って出し」の状態では、中心部が少し明るいだけで、全体としては眠たい印象の画像になりがちです。そのため、アンドロメダ座大銀河を作品として仕上げるには、撮影後の画像処理が非常に重要な役割を果たします。

この記事の内容を、YouTube動画でもわかりやすく解説中です。

今回は、あらかじめスタックまで完了した画像を用いて、アンドロメダ座大銀河をどのような考え方で処理していくのか、その過程を順を追って見ていきましょう。

元画像の状態確認

まずはこちらが、コンポジット直後で、まだレベル調整も行っていない状態の画像です。
中心部がぼんやりと明るくなっているものの、銀河全体の広がりや構造はほとんど感じられません。初めてこの状態を見ると、「本当にここから立派な銀河になるのだろうか」と不安になるかもしれませんが、ここからが画像処理の腕の見せどころです。

最初のステップとして、アンドロメダ座大銀河の淡い部分がどの程度写り込んでいるのか、また周辺減光がどのくらい残っているのかを確認するために、レベル調整を行います。
この段階では、見栄えを整えることよりも「素材の状態を把握する」ことが目的です。

レベルを大きく動かしてみると、銀河の外縁部まできちんと写っており、フラット補正も良好で、背景が均一なフラットな画像になっていることが確認できます。淡い部分が十分に記録されていることが分かれば、その後の処理にも安心して進むことができます。

カラーバランスの調整

次に、カラーバランスを整えます。現状では色のバランスが大きく崩れているため、オートストレッチを使って全体の色調を整えます。
これだけでも、アンドロメダ座大銀河らしい姿が浮かび上がり、ひとまず完成と言ってもよいレベルの画像になります。しかし、ここではあくまで通過点です。さらに一歩踏み込み、より立体感と情報量のある仕上がりを目指して調整を続けていきましょう。

デジタル現像による中心部階調の調整

銀河の中心部を見ると、やや白飛び気味になっていることが分かります。そこで、デジタル現像を使って白飛び部分の階調を圧縮します。
デジタル現像を呼び出し、プレビューにチェックが入っていれば、基本的にはデフォルト設定で大きな問題はありません。ただし、エッジ強調の値を 0 より大きく設定することは忘れないようにしましょう。

この処理によって、中心部の白飛びが抑えられ、明るい核から外縁部へとなだらかにつながる、アンドロメダ座大銀河本来の明るさ分布が見えてきます。

エッジ強調の値は、星の周囲に黒い縁取りが現れないギリギリのところまで上げるのがコツです。
わずかな差ですが、仕上がりの自然さに大きく影響します。

中心部の白飛びがまだ気になる場合は、灰色のスライダーを左に寄せて、階調圧縮をさらに強めます。このとき、中心が「ただ暗くなる」のではなく、「明るく輝いている印象」を残すことが大切です。明るさを抑えすぎないよう、全体のバランスを見ながら微調整しましょう。

トーンカーブによる淡い構造の強調

続いて、中間調からシャドウ部を持ち上げ、銀河の淡い構造をより分かりやすくします。ここではピンポイント・トーンカーブを使用します。
銀河外縁の淡い部分にストレッチポイントを設定し、ストレッチ強度を上げることで、これまで目立たなかった構造が浮かび上がってきます。ストレッチポイントを左右に動かして、銀河の淡い部分の階調がなめらかになるように調整します。

淡い部分を強調すると、どうしても中心部が再び明るくなりがちです。その場合は、ハイライト復元のスライダーを少し左に動かし、オートストレッチ前の明るさに近づけるよう調整します。
白飛びの領域をなるべく少なくして、全体的になめらかに変化しているように見えるかどうかを意識することが重要です。

次は色の表現です。マトリクス色彩補正を使うと、アンドロメダ座大銀河の周辺部に見られる青みがかった領域がより際立ちます。
CMOS カメラで撮影した画像の場合は「CMOSカメラ用」、デジタルカメラの場合は「デジタルカメラ用」を選択すれば、基本的にパラメータを細かく調整する必要はありません。

色彩調整

アンドロメダ座大銀河の色は、そこに存在する恒星の色を反映しています。場所によって恒星の年齢や種類が異なるため、それが色の違いとして現れているのです。

さらに Lab 色彩調整を使って、色にもう一段階の表情を加えてみましょう。
周辺部の青色と、中心部の黄色をそれぞれ強調することで、銀河の構造がより立体的に感じられるようになります。黄色い部分は年老いた星々、青い部分は比較的若い星々の集まりを示しています。

構造強調と恒星処理

次に、銀河の細部構造を引き締めます。スマートマルチバンドシャープを使い、特に暗黒帯の構造がはっきり見えるように調整します。
この処理では恒星も同時に強調されてしまいますが、後の工程で抑えることができるので、ここでは暗黒帯がしっかり認識できるところまで「強さ」を上げてみましょう。

やりすぎると不自然になってしまうため、「一皮むけた」程度の印象にとどめるのがポイントです。

シャープ処理で強調されすぎた恒星は、スターシャープを使って落ち着かせます。
手前の恒星を控えめにして主役であるアンドロメダ座大銀河を引き立てる、という考え方もありますが、私たちは天の川銀河の中からアンドロメダ座大銀河を眺めている、という事実も忘れてはいけません。どの程度星を残すかは、作品として何を表現したいかによって変わります。

ノイズ低減と最終調整

ここまで処理を進めると、背景のノイズが目立ってくるため、輝度/カラーノイズ低減を行います。
ノイズを消しすぎると質感が失われてしまうので、あくまで「気にならない程度」を目標に調整します。

最後の仕上げとして、再びレベル調整を行い、背景の暗さを整えます。背景を完全な黒にしてしまうと、銀河の淡い立ち上がりが不自然に途切れて見えてしまいます。
わずかに明るさが残る程度に抑えることで、銀河全体の存在感が引き立ちます。ここは好みの分かれるポイントでもあるので、納得がいくまで微調整しましょう。

仕上がり画像の確認と鑑賞

では、仕上がった画像から星の物語を読み解いていきましょう。

M31 は、私たちの銀河系が属する局部銀河群の一員であり、その中でも最大の銀河です。直径は約22万光年と、私たちの銀河系の約10万光年を大きく上回り、およそ1兆個もの恒星を抱えていると考えられています。

アンドロメダ座大銀河が銀河系の外にある独立した銀河だと判明したのは、今からおよそ100年前のことです。それ以前は「アンドロメダ星雲」と呼ばれ、天の川の中にあるガス雲の一種だと考えられていました。この発見は、宇宙のスケール感を一変させた大きな転換点でもありました。

アンドロメダ座大銀河は渦巻銀河で、中心部のハローから渦巻状の腕に沿って暗黒帯が広がっています。ハロー付近には年老いた星が多く、黄色っぽい色合いをしています。一方、渦状腕では比較的若い星が多く、青みを帯びた領域が目立ちます。他の銀河では、暗黒帯に沿って赤い Hα 領域が散在していることが多いのですが、アンドロメダ座大銀河ではそれほど顕著ではありません。このことから、現在の星形成活動は比較的穏やかな状態にあるのかもしれません。

M32 や M110(NGC 205)は、アンドロメダ座大銀河の伴銀河で、重力的に結びつきながら寄り添っています。もし私たちの銀河系を外から眺めることができたなら、大小マゼラン雲が寄り添う姿が見えるのでしょう。

アンドロメダ座大銀河を舞台とした作品というと「銀河鉄道999」が真っ先に思い浮かびますが、40代より若い方にはすでに名前くらいは聞いたことがあるという古典扱いにとなっているようです。「999」以降、アンドロメダ座大銀河が出てくる作品でメジャーになったものはありません。何事も合理的、現実的に考えることが求められがちな昨今、地球から250万光年という圧倒的な距離が、物語の成立を拒んでいるのかもしれません。

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