天体写真撮影初心者の石川は、上山先生のレクチャーで星雲・星団の撮影にチャレンジ中! 前回に引き続き今回も「ステライメージ8」を使った画像処理について紹介していきます。
今回のキーワードは「ダーク補正」と「コンポジット」です。
前回の記事はこちら↓
ノイズを打ち消す「ダーク補正」
画像処理の中で「ライト画像」と「ダーク画像」というものを使いましたけど、あれってどういうものですか?
「ライト画像」は普通に天体を撮影した画像のことだね。
一方の「ダーク画像」は望遠鏡にふたをして撮影した画像のこと。それを使って画像処理をするのが「ダーク補正」だよ。
望遠鏡にふたをして撮影した画像?それって真っ暗で何も写っていないはずですよね。何に使っているんですか?
実は、デジタルカメラで撮影した画像には、必ず撮影素子や回路から発生する「ダークノイズ」が含まれていて、このノイズは露出時間に比例して現れてくるんだよね。
露出時間に比例?
ふだん景色などを撮影するときは1秒以下のシャッタースピードで撮影するけど、星の写真って、1分以上撮影することもあるよね。
短いシャッタースピードではノイズがそんなに気にならなくても、長時間露出しているとノイズが加算されて目立つようになってくるんだ。
そうなんですね。
さらに、天体写真は背景の空が暗いから余計にダークノイズが目立つんだよね。
その「ダークノイズ」をなくすために必要なのが「ダーク画像」なんですか?
そう! これを見て。先ほどの真っ暗な画像を、わざと強調処理してノイズを浮き上がらせてみたものだよ。
黒い背景の中にいろいろな色の粒が見えますね。これがノイズなんですね。
実はこのダークノイズには再現性があって、天体を撮影した画像からこのダーク画像を引くことで、ノイズを相殺できるんだよ。
すごいです!
ダーク画像は、天体の撮影後に望遠鏡にふたをして、天体を撮影した時と同じ時間・ISOで撮影するよ。
ダークノイズは時間だけでなく温度にも比例するから、なるべく天体を撮影した時と同じ条件で撮影するんだ。
条件を揃えることがダーク画像を撮影する時のポイントなんですね。
ダーク画像は、天体を撮影した4分の1くらいの枚数を撮影して、これをコンポジットしたものを使おう。もちろん、ダーク補正を行うときは強調処理はせずに、真っ暗の画像をそのまま使用するよ。
ダーク画像のポイントは「ライト画像と同じ条件で撮影」すること
コンポジットでめざせ!美しい天体写真
コンポジットって、天体画像の撮影でしか聞かないですよね。
たくさん撮影するのって大変ですし、コンポジットって本当に必要なんですか?
画像を見ると分かりやすいよ。「5分露出の画像の1枚撮り」と「5分露出の写真を8枚コンポジットしたもの」を比べてみよう。
8枚コンポジットの方がノイズが少なくてきれいな画像ですね。どうしてこんなに違いが出るんですか?
露出時間が違うからだね。「1枚どり」の画像は5分間の露出だけど、「8枚コンポジット」の方は5分×8枚撮影したものだよ。露出時間が長くなるほど画質は良くなるよね。
あれ、でも「5分×8枚コンポジット」と「40分間露出」って何が違うんでしょう?
いいところに気がついたね。
今回撮影した機材や条件で40分間撮影すると、露出オーバーになって画像全体が白く飛んでしまうんだよ。
そうなってしまうと、画像処理で元に戻すこともできなくなるんだ。
なるほど! だから適正露出で撮影して、枚数で露出時間を稼ぐことが大事なんですね!
なるべく露出時間を長くすることが、良い天体写真に仕上げる最大のポイントだよ。
だけど、画質と露出時間(撮影枚数)には、
画質=√露出時間
の関係があるんだ。
コンポジット枚数が多くなるにつれて、コンポジットによる画質の向上の効果が下がってくるんですね。
1枚より2枚なら画質は1.4倍、4枚なら画質は2倍向上するけど、画質をどんどん上げようとすると必要な枚数が増えてくるよ。
うーん、どうしたらいいんでしょう。
天体の変化は小さいから、数晩かけて撮影したり、場合によっては数年かけて撮影したりもできるんだ。
1天体にこだわってたくさん撮影するのもいいし、ある程度のところでやめてたくさんの天体を撮影する方法もあるよ。最初のうちは1時間くらいの露出に抑えて、いろいろな天体を撮影するのがおすすめだよ。
わかりました! まずはいろいろな天体を撮影してみようと思います!