とある落語の枕に登場する狂歌が思い出される今日このごろ。
西日射す九尺二間に太っちょの背なで児が泣く飯(まま)が焦げつく
暑い日が続いております。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
はじめに
私はニュートン反射望遠鏡(Vixen R130Sf, F5)とキヤノン EOS Kiss Mでよく撮影を行うのですが、撮影画像の周辺部の星がやはり少し流れてしまいます(コマ収差)。これは光学系の性質上しかたのないことなのですが、補正レンズを使うことで改善できることもたしかです。
今回はあえて純正品を使わずに、レデューサーを自作してみました。
自作といっても、ありもののレンズやアダプターを組み合わせただけのお手軽クッキングです。
レデューサーとは?
レデューサーとは、天体望遠鏡とカメラを使った直焦点撮影で、光学系の焦点距離を短くするために用いる補正レンズです。これにより、像が明るくなったり写野が広がったりします。
今回はレデューサーとしての役目というよりは、コマ収差を抑える目的なので、どちらかというとフラットナーの効果を期待しています。
※ フラットナーは、コマ収差を抑える目的の補正レンズです。レデューサーとは違い焦点距離は変わりません。
ネット上に作例多数
まず、情報収集のため「自作レデューサー」で検索してみると、既に実例がいくつもヒットしました。
検索結果からブログ等を参照すると「ケンコー ACクローズアップレンズ No.4」を使った例が多いようです。各所に掲載されている比較画像を見ても、なるほどそこそこの像の改善は見込めそうです。
そして、そういった情報には F5 の鏡筒を対象にしている例が多かったので、これも私の鏡筒と合致することに心躍りました。よしよし、いけそうです。
先人の方たちの知恵を拝借して、同じように作ってみよう…と思った矢先、あることに気づきます。
EF-M マウントの壁
ネット上に掲載されている様々な情報を占める大部分は、キヤノンの EF マウントに取り付ける前提なのです。私のカメラはキヤノン EOS Kiss M。センサーサイズは APS-C で、EF-M マウントです。
ガビーン…!
使用しようとしていた「ケンコー ACクローズアップレンズ No.4」の仕様表を確認すると、一番小さいサイズでもフィルター径が 49mmでした。
EF であればマウント径が 54mm ですので、アダプターにも収まる余地がありますが、EF-M はマウント径が 47mm。サイズが合いません…。小さい分にはなんとかなりますが、大きいと切ったり削ったりしないといけないなあ…と一気にハードルが上がります。何かいい手立てはないものでしょうか。
使用するレンズを変えてみることにしました。
残念ながらまだいろいろ勉強中の身で、知見も少なく光線追跡すらまともにやったことがありません。
そこで「えいやっ」と、「MARUMI MC クローズアップレンズ No.4」に目を付けました。フィルタ系は 40.5mm 、これは問題なさそうです。そして、価格がなんと当時 875 円という安さ。「AC」と「MC」の違いはありますが、実験的に購入してもさほど負担にならない額ですね。これが決め手となり(?)、ポチッと注文しました!
※ ケンコー「AC」… アクロマートレンズ。2 枚のレンズを組み合わせたレンズで、色収差が少ない。1枚レンズより高価で重たい。
※ MARUMI「MC」… マルチコートレンズ。1 枚のレンズで比較的、色収差が出やすい。安価で軽い。
補正レンズとカメラを取り付けるためのマウントアダプターは「ケンコー T-MOUNT(キヤノン M マウント用)」を選択。レンズが収まればいいか、くらいの認識でサクッと決めました。
レデューサー組み立て
さて、モノが届きました。
まずは、部品を眺めてどう手を入れようか思案します。ここが工夫のしどころ、頭の使いどころですね。(レンズを取り外す…?レンズとマウント内の隙間はボンドで埋めてしまう?)
そして、その結果意外とかんたんな方法が見つかりました。工具はドライバーのみです。
あれれ、たった3ステップで完成してしまいました。
レンズの枠の口径がいい塩梅で、マウントアダプターのイモネジで固定することでガタツキもなく、1つのレデューサーに仕上がりました。
実際に撮影してみた
さっそく、自作レデューサーを使用して、実際の夜空を撮影してみました。
しかし、光害地であまり星が写りませんでした…。いかがでしょうか。
上がレデューサなし、下がレデューサーありの画像です。明るさを比較するため、レベル調整などは行っていません。
いかがでしょうか。写野は若干広くなり、全体的に少し明るくなっています。コマ収差も、なんとか減っているように感じますが確信は持てません。
レデューサーの位置によって収差は変わるので、前後いろいろ試してみたいところですが、今のマウントアダプターでは位置が固定となってしまいますので、さらなる検証も含めて今後の課題としたいと思います。