天体画像処理完全マスター!「オンライン講習会」レポート

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アストロアーツでは、主に天体撮影や画像処理を中心に、これまで多くの「天文を学んで楽しむ」講習会を開催してきました。コロナ禍にあっても私たちの中の「学びたい」という気持ちは変わらないことでしょう。しかし、「どうしても会場に足を運びにくい」「予約をしても当日の体調がわからない」という不安が、学びの足を引き止めてしまうことも。

そこで、昨年より弊社では「オンライン講習会」を積極的に開催しています。昨今いっそう身近なものとなったWeb会議システム「Zoom(ズーム)」を使用し、その場で質疑応答を受け付けるなど、単なる一方通行の配信とならないように工夫をしています。

本記事では、特に「スタッフは見た!」というような視点で
オンライン講習会の舞台裏に迫りたいと思います!

今回のオンライン講習会の概要

2021/06/26~27の2日間にわたって、天体画像処理の実践的な知識・ノウハウをお伝えする講習を開催。内容を大きく「下処理」「仕上げ処理」に分けて、じっくりと解説を行いました。

■ タイトル
天体画像処理 完全マスター 実践編

■概要
ステライメージのユーザーを初めとした皆さまからの声を元に、星雲・星団を対象とした天体画像処理でつまずきやすいポイントを取り上げて、重点的に解説します。「ステライメージ9」の実演を織り交ぜながら講義し、皆さまからの質問にも積極的に答え、画像処理がうまくいかない、どうすればいいかわからないという方の悩みを一緒に解決します。

■ 講師
上山治貴(かみやま はるき)
株式会社アストロアーツ取締役。同社設立に参画後、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」を開発し、以後「ステライメージ」「ステラショット」「ステラドームプロ」などを中心となって開発。幼少のころからの天文ファンで、とくに日食、流星が大好物。

  • 1日目:下処理
    • 画像処理の順序
    • ダーク補正
    • ホットピクセル、クールピクセル除去
    • フラットフレームによるフラット補正
    • RAW現像
    • コンポジット:コンポジットの原理 / 加算と加算平均の違い / σコンポジット
    • データの保存
  • 2日目:仕上げ処理
    • 周辺減光とセルフフラット補正
    • 画像の明暗を調整する:レベル調整 / ヒストグラム / トーンカーブ / 階調圧縮
    • カラーの調整:オートストレッチ / マトリクスカラー強調 / Lab色彩調整
    • ディテールの強調:アンシャープマスク、ウェーブレット処理
    • ノイズを低減
    • 恒星像の調整:スターシャープ、スターエンハンス
    • ステライメージ9の「画像調整パネル」と各処理の対応

事前準備

プラットフォーム

アストロアーツのオンライン講習会では、イベント運営サポートサービス「everevo(イベレボ)」とWeb会議ツール「Zoom(ズーム)」を使用しています。それぞれ、どのような役割・目的があるのかを簡単にまとめました。

  • アストロアーツ
    • オンライン講習会企画
    • 全体告知
    • 資料作成
    • 当日対応(講師、進行、機材セッティング)
  • everevo(イベレボ)
    • 案内送付
    • 申し込み受付・管理
    • お支払処理
    • お問い合わせ対応
    • アフターフォロー
  • Zoom
    • 「ウェビナー」機能を使用してオンラインのセミナー会場を設置
    • 講師、進行役の顔や声、スライド資料やソフトウェア操作画面等を配信
    • 「Q&A」による質疑応答
    • 「チャット」「挙手」による参加者からのフィードバック

充実の配布資料

講習の内容は深く細かいところまで話題が及ぶため、参加者の皆さまには事前に資料を配布します。当日、手元で内容の “現在地” を確認しながら講師への質問を練ったり、あとで振り返ったりする際にお役立ていただけます。

配布資料は単に項目を列挙しているだけではなく、しっかりと読み物として構成しています。

今回の資料は1日目は17ページ、2日目は20ページというボリュームになりました。

オンライン講習会で実際に使われた配布資料

配布資料の内容は過去の資料をそのまま流用するのではなく、オンライン講習会主宰の廣瀬(事業企画部)が中心となって毎回編集し直しながら改良を加えています。

また、オンライン講習会にお申し込みいただいた方々の事前質問(アンケート)から得られた内容も資料に盛り込み、直前まで調整を重ねます。

こうして、秘伝のタレのように洗練されたところで講師の上山が講習の内容に照らして再確認し、さらに「ステライメージ9」などの製品開発者も内容を監修しています。

オンラインでも密を回避

オンライン講習会とはいえ、スタッフ同士の感染リスクも下げる必要があります。昨年、オンライン講習会をはじめた当初は広々とした外部会議室をレンタルしたり、会社の会議室で全員マスクをしたりして臨んだこともありました。

しかし、外部会議室だとネットワークが安定しなかったり、マスクを付けると皆さまへお届けする音声がこもって聞き取りにくかったりすることがわかりました。

だんだんと画像や音声機材なども安定的に運用できるようになったため、現在は同じフロアの中であっても別々の場所から操作・対応を行うようにしています。

会議室で内容を最終確認中の講師(上山)
自席から講習会を見守る進行役(廣瀬)

そろそろ全員自宅から配信を行ってもよいのでは?とも考えますが、やはり不測の事態には迅速に対応しなければなりませんし、時には望遠鏡などの機材を扱いながらの説明もあるため、担当スタッフは出社のうえ密を回避しています。

講習会の様子

実践的な講習内容

今回のオンライン講習会「天体画像処理 完全マスター 実践編」では、前半でスライドを用いて基礎知識を確認したあと、実際に「ステライメージ9」を操作しながら天体画像処理の流れや気をつけるべきポイントを解説しました。

天体画像処理を実践解説中の講師(上山)

参加者の皆さまに見守られながらのリアルタイムの画像処理で、講師の上山も少し緊張気味。「あれ、(画像の入った)フォルダはどこに行った…?」「おっとコンポジット画像の保存を忘れるところだった」と、図らずもつまづきやすいポイントを体現しながらの解説となりました。

スライドを使った説明(Zoom画面)

活発な質疑応答

オンライン講習会では、参加者の皆さまからの質問を講習中、随時受け付けています。解説の途中であっても、理解できなかった点をその場で「Q&A」に書き込んでいただくことで、進行役がちょうど良いタイミングで講師に投げかけます。参加者の方々に、なるべく疑問を蓄積せずに聴いていただけるように努めています。

続々と寄せられる質問(Zoom画面)
質問を整理しながら進行(廣瀬)

また、解説後に設けられた「質疑応答」の時間には、毎回多くの質問を頂きます。小さなお困りごとから、深い疑問、鋭いツッコミまで内容は様々。基本的には講師や進行役がその場で回答しますが、説明が長くなるもの、少し調べなければならないものについては、後日質問者の方へ直接メール等で回答を差し上げています。

講習会後のフォロー

オンライン講習会後も、前述のとおりその場で回答できなかった質問への返答作成や、録画映像の配布などなるべく多くの学びを参加者の皆さまに残していただくよう、アフターフォローを欠かしません。

オンライン講習会完了後、すぐに案内されるURLから内容を動画で振り返ることができる

事後のアンケートも実施し「今回の内容は合わなかった(簡単すぎた、難しすぎた、聞きたいことが聞けなかった)」というご意見があれば、次回以降の企画に反映したり適切な講習会をご案内したりして、少しでも「天文を学んで楽しむ」機会を広げられるよう考えています。

スタッフの声

― 講師として従来の講習会との違いは?

上山
上山

最初はお客さんの顔が見えないので反応がつかめずとまどいましたが、随時入る質問でだんだんと感触がつかめてきたので、従来通りに講習を進めることができました。

― オンライン講習会を企画していますが、モチベーションはどんな所にあるのでしょう?

廣瀬
廣瀬

最初は「コロナ禍で通常の講習会ができない、ならオンラインでやってみよう」というのがきっかけだったんですが、今では「オンラインだからできること」を追求しようと考えてます。 天文仮想研究所(星ナビ4月号に登場した、VRイベントを実施しているグループ)の方と話したときに「現実を仕方なく代替するためのオンラインではなくて、バーチャル空間でなければできないことがあるからやってるんだ」というのが強く印象に残っていて、自分もその心意気でオンライン講習会に取り組んでます。

― リアルの講習会を補うだけでなく、オンラインだからこその強みもあるのですね。具体的にはどのようなことでしょうか?

廣瀬
廣瀬

たとえば、質問することに全く遠慮がいらないというのはオンラインならではの強みだと思います。対面なら質問するタイミングを選ばないと話を遮る可能性があったり、大きくさかのぼっての質問はしづらくなりますが、そういったことを全く心配せずに質問ができるような雰囲気作りを心がけてます。

― たしかに、心理的なハードルは低くなっていますね。逆に、オンライン特有の難しさはありますか?

廣瀬
廣瀬

参加者の顔が見えないので、話していることを理解してもらえているかわからないというのがオンライン講習会の典型的な課題だと思います。そこを埋めるために事前・事後のアンケートを充実させ、またわからなければ忌憚なく質問できるシステムにしています。

― オンライン講習会に興味のある皆さまへ一言

上山
上山

コロナ対策ではじめたオンライン講習会ですが、リアル講習会とくらべて地域的な制約がなく参加しやすいかと思いますので、今後も続けていきます。ぜひ、よろしくお願いいたします。

“リアル講習会”の開催が難しい世の中だからその代わりに―、と「オンライン講習会」に足を踏み入れましたが、オンラインならではの良さにも気づき始めました。

これからも、楽しく有益な講習会を企画してまいりますので、ぜひ情報をチェックしてみてください!

今後のオンライン講習会

今後、弊社開発部の上山治貴の講習に加え、星景写真家の北山輝泰さんをゲスト講師にお迎えしたオンライン講習会も予定しています。

日付内容講師
7月24日(土)星景写真基礎講座北山輝泰
8月21日(土)ステラショット実践編上山治貴
8月25日(水)星景タイムラプス基礎講座北山輝泰
9月11日(土)光害地での星雲星団撮影上山治貴
9月25日(土)星景写真中級講座北山輝泰
10月23日(土)星景タイムラプスステップアップ講座北山輝泰
11月27日(土)星景写真上級講座 星景写真のRAW現像とマスク処理北山輝泰
12月18日(土)星景写真・講評会北山輝泰

※ 内容・スケジュールの予定は変更になる場合があります

最新の情報は下記の案内ページをご参照ください。

アストロアーツ 天文講習会
アストロアーツ天文講習会(アストロアーツWebページ)

(参考)オンライン講習会ご参加の流れ

アストロアーツのオンライン講習会への参加の流れをご紹介します!

お申し込み

  1. アストロアーツ「天文講習会」ページでオンライン講習会の情報を確認
  2. イベント運営サポートサービス「everevo(イベレボ)」からお申し込み
    • はじめての方は新規会員登録
    • 受講料のお支払(クレジット/コンビニ支払い/銀行振込)

オンライン講習会前

  1. 「everevo」内のチャット機能でイベントに関する連絡を確認
    • 案内に従ってWeb会議システム「Zoom(ズーム)」のセミナー機能「ウェビナー」に登録 → 参加用のURLが届きます
    • 事前アンケートで講習内容に関する質問などを送信
  2. 申し込み後に送付される「配布資料」を受け取り
  3. 「Zoom」をパソコンやタブレット等にインストール
    • ヘッドホンやスピーカーなど機器接続の確認

講習会当日

  1. 前日までに届いた「ウェビナー」参加用のURLから「Zoomミーティング」に参加
  2. 講習中は配布資料を手元に開きながら内容を聴講
    • 随時、質問メッセージを送ることが可能です

講習会後

  1. 講習会の録画映像を受け取り(「everevo」内チャット機能にて)
  2. 個別の質問への回答を受け取り(時間の都合などで、講習中に講師から回答差し上げられなかったものについて)
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