はじめに
昨年末に「ステラナビゲータ12」のアップデータ12.0iを公開しました。修正点の多くは、お使いいただいている方からのご指摘によるものです。いつもステラナビゲータをご利用いただき、本当にありがとうございます。
ここでは多くの変更の中から、いくつかの修正点や改善点について解説します。
極軸望遠鏡ダイアログに表示される北極星の位置が大気差補正されていない問題を修正
「極軸望遠鏡」ダイアログは、各社の赤道儀に内蔵されている「極軸望遠鏡」で見た北極星をどの位置に調整すればいいかを表示するものです。これは今から20年ほど前の2006年に発売された「ステラナビゲータ Ver.8」で搭載された機能です。それから20年が過ぎた今になって修正された「大気差補正」とは、星が大気の屈折によって実際の高度よりも高い位置に見えるという現象を補正するものです。当然北極星も大気差によって浮き上がるのですが、これを考慮していなかったというのが今回の修正内容です。

ステラナビゲータの星図で北極星をクリックして表示される天体情報パレットにある「高度」と「標準大気差補正済み高度」との差がこの大気差にあたり、北緯35度付近での北極星の高さは本来よりも0.023度、つまり1.4分角ほど高く見えることになります。極軸望遠鏡をステラナビゲータの表示に合わせた場合、これまでは極軸の方向が、本来合わせるべき高さよりも1.4分角ほど低い方向を向いていたことになります。この1.4分角という数字は、天の北極と北極星との角距離の4%程度、木星の視直径の2倍ほどの角度です。

なお天体は、地平線に近いほど大気差によって大きく浮き上がって見えるため、地平線の近くでは極端に浮き上がって見えます。夕方や朝の出没前後の太陽や月が少しつぶれて見えるのもこの現象によるものです。ステラナビゲータの星図で、地平座標モードで表示した太陽や月もこの様子を再現しています。
地方時角グリッドを表示する機能を追加
ステラナビゲータでは、赤道座標、黄道座標、地平座標などのさまざまなグリッドを表示できます。今回のアップデータでは、メニューの「天体/恒星・星座」から「経緯線」を選択すると開く「経緯線」ダイアログに、「地方時角」という項目が追加されました。これをONにすると、南を0時として西まわりに24時までの地方時角を表示します。このグリッドは時間を変えても変化せず、空に張り付いているように見えます。緯度方向は、「地方時角」ではありませんが赤緯線が表示されるようになっています。船や飛行機が天文航法を使って現在位置を計算する場合、この「地方時角」が使われます。

近年は長期にわたって閏秒が入らないため、西暦2017年以降のうるう秒変化をゼロに固定した
ニュースなどの報道で「うるう秒」が話題になることがあります。いつもは60秒ごとに1分、60分ごとに1時間をきざむ時計ですが、数年に一回程度の割合で60秒ではなく61秒で分を進めるという調整が入ることがあります。これは原子時計で計測される1日と地球の自転速度のズレを解消するためのものです。
近年は、地球の自転が速くなっているという話を聞いたことがあるかもしれません。その原因ははっきりとわかっていませんが、これによって「うるう秒」の必要性がなくなっているため、2017年を最後に一度も調整されていません。
ステラナビゲータは、計算によってある程度予測可能なうるう秒が入ることを前提に動いており、これまで数年はこの「うるう秒」の異常事態には、データを修正することで対応してきました。しかし、さらにこの状態が長引けば天文現象を正確に再現できなくなると判断し、将来のうるう秒を予測して加えることを一旦停止しました。つまり、2017年を最後に、自動的にはうるう秒を調整しません。もちろん今後の地球の動きによっては再びうるう秒を入れるように修正する予定です。
彗星のシンクロンの長さが、指定された期間での放出よりも短く表示される問題を修正
彗星の表現はステラナビゲータがこだわっている点の一つであり、1992年発売の初期バージョンからイオンの尾、ダストの尾それぞれを実際に計算してシミュレーションしています。
彗星の尾には、ある時刻に放出されたダストがたどる広がりを表すシンクロンと、ダストの粒の大きさごとに広がっていくシンダインの2つがあります。今回、ご自分で彗星の尾の軌道を計算されている方から、「シンクロンの長さが自分の計算と合わない」というご指摘をいただきました。調査したところ、ステラナビゲータではシンクロンの長さが実際よりも1割ほど短く表示されていることがわかりました。これはステラナビゲータの最初のバージョンから、30年以上も見つからなかった不具合です。ご指摘をいただいた方には、この場を借りて深く感謝いたします。

あまり知られていないかもしれませんが、この尾の長さは彗星を右クリックして表示されるメニューから「テイル編集…」という項目を選択して表示されるダイアログで調整することができます。彗星の尾はダストの放出量やその粒の大きさなどで大きく変わるため、ご自分で撮影された画像を見ながら、このダイアログで画像に合うように調整することもできます。ぜひお試しください。

