遂にネオワイズ彗星に出会えました!!
梅雨の関東。
太陽にすらお目にかかれぬ毎日で、やってきたのはネオワイズ。
気象予報に希望をみれば、早起き・遠征・双眼鏡。
されど彗星、雲の向う。そして私は雨男。タイムラインは悲喜交々。
ああ早く見たい、撮ってみたい。
「会えない時間が愛育てるのさ」彗星だって同じこと。
想い募らせ今度こそ、挑むぬばたまの宵。さてさて―。
はじまり
こんにちは、アストロアーツの新人くぼたです。
下手な前口上はこのあたりにしておいて、さっそくネオワイズ彗星を眼視・撮影するまでの奮闘記をはじめて参りましょう!
2020/07/19 、久々に関東に晴れ間が来そう…!
しかし、GPV 気象予報で雲の様子を伺うも移動可能圏内に「ここだ!」と言えるほどの好条件は見当たらず、どの場所も一長一短だなあという感じでした。
しかも、GPV の現在の予報図では晴れているはずの頭上には、一面の雲が…。今回も期待薄か…。
さて最近、家系ラーメン屋の「町田商店」に”ほの字”になってしまい、順調に恰幅の増すお腹に後ろめたさを感じつつも、撮影の景気づけに恐らく同系列の「相模原商店」で腹ごしらえ。腹が減っては戦はできぬ、の例えであります。
冷たい水を飲み干して、若干の油とたまねぎの余韻を口に感じながら店を出て空を見ると、なんだか南の空が晴れているではありませんか!
ええい、ままよ!このまま車を走らせてしまえ!
神奈川県平塚市の「高麗山公園」という高台を目指します 🚗
望遠鏡、赤道儀などは自宅に置きっぱなしでしたが、移動時間を考えると取りに帰るのは難しそう。幸いにして車内にコンパクト赤道儀「ナノトラッカー AG」と三脚、カメラなど一式積んであったので、これで臨んでみることにしました。
撮影地、高麗山公園に到着
道中、どんどん広がる青空に期待を膨らませながら、1時間弱で到着しました!ツーリング客、家族連れ、アベックの方々―日曜の夕方ということもあり、わいわいと賑わっています。
ネオワイズ彗星が見えるであろう方向を、星図表示アプリ「iステラ」でチェック。まだ雲があるものの、視野は特に問題なし!
さらに何箇所か歩き回り、人の少ない小さめの展望台を発見しました。今夜の場所はここに決定。三脚・ナノトラッカーを設置し極軸を合わせておきます。
撮影地での一期一会
機材を設置していると、リュックサック・三脚ケースを背負った純朴そうな好青年が階段を上ってきて、同じく西の空をしげしげと眺め始めました。
(これは、もしかして同じく彗星を撮影しに来た人かな…?)
彗星の撮影ですか?
そうです!お兄さんも…?
はい、平塚市内なんですが、歩いて山を登ってきました!
げげ!すごい熱意ですね。遠かったでしょうに~
(車でもまあまあ時間かかったぞ…)
基本的に1人で人知れず寂しい場所に行って、ソロで撮影することが多い私。こうして、同じ志を持った同年代の人と観望や撮影の楽しみを共有できるのは、非常に嬉しいことです。
しかも!
今年、出身地の長崎から就職のため関東に引っ越してきたのだそう。私も鹿児島出身ということで、同じ九州という意味では同郷。そして、同じくネオワイズ彗星を狙う仲間同士ということで、話も弾みます。
不思議な人の縁に何か感動を覚えつつ、日が沈むのを待ちます。
ネオワイズ彗星を見つけた!
だんだんと空も暗くなり、北斗七星がうっすら見えはじめた頃。
双眼鏡で辺りを探していると、意外なほどあっさり見つけてしまいました。
あ、いた…!やっと出会えた。。。
明らかに恒星とは異なる姿。ぼんやりとした核と淡い尾。これです。これが見たかったのです。使用した双眼鏡は SVBONY の SV39(8 × 42)。青年 T くんにも双眼鏡を渡し、彼も四苦八苦しながらも視えたようです。しかし、両者とも肉眼で直接発見することはできず…。
最近、ステラショットの自動導入にばかり頼っていたので、当初はちゃんと見つけられるか不安でしたが、こんなふうに辿ってみました。
「北斗七星の『メラク』」から視線を下げていき、目立つ2つの恒星がを見つけて、その少し左上にネオワイズ彗星
双眼鏡や写真だと、想像以上にその存在感が大きく「見つけられないのでは…?」という不安はめでたく杞憂となりましたとさ。
さあ、撮影しよう!
さて、ネオワイズ彗星を捉えたとなれば、高度に余裕のあるうちに撮影しておきます!こんなに晴れるなら望遠鏡を持ってくればよかったと、若干の後悔を抱きつつ、ズームレンズ(200mm)で追尾撮影を開始します。
決していい条件とはいえないものの、初めての撮影でここまであぶり出せたのでOKとしましょう。背景がまだ白んでいたので、周辺減光の影響が大きく、補正は試みましたが中心部の山が目立って残る結果となってしまいました。
彗星と地上風景、という構図も定番です。私もミーハーなのでがんばってみました。
もう少し星が写ってくれるかなと思いましたが光害の影響が大きく、あくまで「街中で見た彗星」といった印象になりました。先の 200mm の画像もそうなのですが、今回はあまりゴリゴリに画像処理はせず、そっと優しく雰囲気を残すようにしてみました。その方が、双眼鏡で初めて見たときのピュアな第一印象の思い出と、写真がマッチして後々味わい深くなるのでは、と。
ネオワイズ彗星と国際宇宙ステーション(ISS)
この夜のもう一つの狙いは、ネオワイズ彗星の少し下をかすめる ISS を一緒に撮影することでした。しかし、こうしてちょっと欲張ろうとするときにトラブルは付き物です。
しまった…!焦点距離と構図を変えたら彗星を見失ってしまった!
あれ、星が写らない!あ、レンズに露が!ああああああ!
すみませ~ん。なにか見えるんですか?
ちょうどあの辺りに彗星が見えるんですよ、ほらどうぞ!(^^)
(撮影画像を再生して見せる)
すご~い。へぇ~こんなに見えるんですね~。
ありがとうございましたー!
いえいえ~
嗚呼、過ぎし ISS よ…
(なんだか、デジャヴな気がします)
慌ててカメラ調整の続きを行うも、残念無念、間に合わず。なんとか肉眼だけでもと、カメラを諦めて空を凝視するも視えず…。12度という高度だったため、相当暗かったのでしょう。落胆。悔しい。
ISS 写りましたよ!
なぬ!?本当だ!
好青年 T くんが見事、撮影してくれました!
そして、このブログへの掲載もお許しいただいたので、皆さんにも見ていただきたいと思います!
写真で見るとわかりますが、ISS はやはり暗かったみたいですね。青年 T くん、実は今回初めて ISS を撮影したとのこと。私が事前に「この辺りに見えるますよ」とサジェストしていただけなのに、しっかり画角に捉えています。ばっちり。素晴らしい!
おわりに
期待以上の遠征になりました。それは、天気や景色、彗星や星、そして人や機会。本記事には登場しませんでしたが、手動追尾のポータブル赤道儀にフィルムカメラを構えた方も一緒に彗星を眺めました(もちろん、初対面)。
生まれや年代、機材や動機がそれぞれ異なっていても、同じ天体や空を仰ぎながら感動を分かち合えることは素晴らしいなあと、しみじみ感じました。そして、おそらくこの日は関東圏内の多くの天文ファンが、そわそわと気持ちを空に向けては祈っていたのでしょう。きっと天の気持ちに思いが伝わったのかもしれません。