ソフトウェア技術部のくぼたです。シリーズ「天文×さだまさし」(全4回)の第2回お届けします。“ん~ ちょっとマジになっちゃったかな?” という曲もありますが、濃い内容でお届けします~!
「天文×さだまさし」第1回をまだ読んでいない方は、こちらも併せてどうぞ!
この記事は、こんな内容です!
(*) 天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ11」を使用。
こんなあなたにぴったりかも!?
はじめに
世の中には宇宙をモチーフにした楽曲が多く存在します。月や星はロマンチックな心象風景の一部として歌詞を彩ることもしばしば。
今回は、シンガーソングライターさだまさし氏の作品の中から、天文にまつわる楽曲の数々をご紹介してまいります。楽曲の考察は、歌詞から読み取れる内容や、天文学的事実をもとに楽しく推測を試みているものです。実際の背景や意図と異なる場合もございますが、どうか温かく広いお心でご覧くださいませませ(意見には個人差があります!) 。
本記事の掲載をご快諾いただきました「株式会社まさし」様には、この場をお借りして心より御礼申し上げます。また、本記事におけるさだまさし様の名称使用、作品紹介に関しては、株式会社まさし様のご了解を得ておりますが、記事の内容につきましては、弊社(株式会社アストロアーツ)の責任のもと掲載をしております。
「天文×さだまさし」楽曲紹介!
さっそく、楽曲の数々をご紹介していきます。各曲、このような構成でまとめています。
天文にまつわるすべての楽曲をご紹介できないこと、お許しください。また、「こんな歌もあるよ!」とお気づきになられた方は、ぜひシェア&リプライなどいただけますと幸いです!
※ —– ご注意 —– ※
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♪ 天狼星に(1989年)
歌詞全文:https://www.uta-net.com/song/95880/
アルバム「夢の吹く頃」に収録。1人の女性が夜汽車に乗り込み、愛する人のもとへ旅立ちます。そして、車窓から星を見つけ、この先に待ち受けているであろう苦難にもくじけないという気持ちを誓う歌です。伴奏はアコースティックギター1本のストロークで演奏されています。
2番のサビにこんな歌詞があります。
窓から見上げる夜空にひときわ
輝く星の名は知らないけれど
蒼い光に かけて誓う
何があっても くじけない
さだまさし 天狼星に 歌詞 – 歌ネット:https://www.uta-net.com/song/95880/
「天狼星」とは、シリウスを意味する中国の言葉です。もっとも、歌詞の中には直接的な星の名前は出てきません。しかし、「ひときわ輝く」という表現はタイトル通りシリウスにぴったりではないでしょうか。シリウスはおおいぬ座のα星で、太陽を除くと全天で最も明るい恒星です。冬の大三角を構成する星のひとつでもあります。スペクトルA型の高温星で、青白く輝くその姿を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
それでは、発売年1989年冬のシリウスを再現してみましょう。
冬の大三角は、オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオン、そして、シリウスを結んだ星の並びです。「冬の大三角座」という星座があるわけではなく、昔から親しまれてきた天体の集合(アステリズム)です。主人公の女性は、溢れる気持ちを抱きながら眠ることもできずに夜汽車の窓に目をやったのでしょうか。そんなとき、賑やかな冬の1等星たちは、彼女の胸にどう映ったのでしょう。「ひときわ輝く」シリウスに心を誓う気持ちは想像に難くないですね。
どうも、プラネタリウム事業部のとよだです。
シリウスは目立って明るいので、子供の頃はさぞや大きい星だろうと思っていたのですが、何より「近い」から明るいんですよね。そうして調べてみると、肉眼で見える星は近いことが多くて、遠いものは珍しい。星空の奥行きを感じたりしました。
宇宙の話題で用いられる距離は、地球上のものとは文字通り桁違いにスケールが大きいため、普段よく耳にする「m(メートル)」「km(キロメートル)」ではなく、「光年」という単位がよく用いられます。1光年は光の速さで1年間かかって進む距離。約9兆5000億kmです。
冬の大三角の星々までの距離を調べてみました。
○ ベテルギウス … 427 光年
○ プロキオン … 11.4 光年
○ シリウス … 8.60 光年
私たちからは、一見ただの三角形のように見えますが、ベテルギウスとシリウスとでは50倍近い距離の差があるのですね。
とよださんの言うように、思い出と星空がリンクすることってありますよね。星に興味を持ちはじめた幼少時代、曾祖母の葬儀の帰り道に初めてオリオン座を見つけました。本でしか見たことのなかった星の並びを実際に見たときの、不思議な気持ち。曾祖母の死という出来事に動揺していた心とともに特に印象深く覚えています。
♪ 1989 渋滞(ラッシュ) -故 大屋順平に捧ぐ-(1989年)
歌詞全文:https://www.uta-net.com/song/96269/
アルバム「夢ばかりみていた」に収録。時代は昭和、ギターケースを抱えて上京した主人公。社会に揉まれながら愛や恋に苦しみ、そんな中でもいつも「歌」と共にあった青春の葛藤を描いた歌です。当時のさだまさし氏のハスキーな歌声や、「渋滞(ラッシュ)」「札束」「ベルリンの壁」といった単語、軽快なリズムで野放図にも聞こえるギターサウンドなど様々な要素が、1989年の都会の喧騒を醸し出すようです。
今世紀最后の 金星蝕が
終わったばかり 何事もないように
宝石がひとつ 空に投げてある
さだまさし 天狼星に 歌詞 – 歌ネット:https://www.uta-net.com/song/96269/
天文の歌の企画を考えたときに、真っ先に思い浮かんだのがこの歌に登場する「金星蝕」でした。楽曲のタイトルには具体的な「1989年」という情報がありますし、しっかり目を引く天文現象も織り込まれています。これだ!と膝を打ったわけです。
さて、金星蝕もとい「金星食」とはなんでしょう。太陽が月によって隠される「日食」と同じように、他の星も月やその他の天体によって覆い隠されることがあります。これを一般に「星食」と呼びます。すなわち「金星食」は、惑星である金星が月に隠される現象です。金星は、宵の明星・明けの明星と呼ばれるように非常に明るく、月との共演は見ごたえたっぷりです。金星が隠される瞬間、月の縁(ふち)の凸凹によってキラキラと明滅する姿が見られることもあるそうです。
百聞は一見に如かず。せっかくですので、金星食の様子をシミュレーションしてみましょう。「ステラナビゲータ11」では、主な天文現象を選び1クリックで再現することができます。さっそく今回の歌に登場する金星食を選択します。
天文現象をクリックすると、アニメーションでその瞬間が再現されます。金星が月の後に隠され、また出てくる様子がよく分かります。ぜひ動画でご覧ください。
そして、こちらは当時の実際の写真です。これが歌詞の主人公が「宝石がひとつ」と喩えた姿、本物だと思うと、感慨深いものがあります。
ソフトウェア開発部のあじきです。
1989年12月の金星食は、夕方の見やすい時間に起きた現象で、本当にたくさんの人が空を見上げました。この日は早めに帰宅して、少し暗い所まで車で出かけて空を見上げたことを覚えています。その瞬間、夕空に明るく輝く金星が突然消えるという不思議な現象に感動を覚え、その足で職場の飲み会に向かったことを今でも憶えています。
♪ ナイルにて – 夢の碑文 -(1990年)
歌詞全文:https://www.uta-net.com/song/119104/
アルバム「夢回帰線Ⅱ」に収録。主人公の女性がエジプトでナイル川を眺めながら、恋人との心の距離を古代エジプトの文明を思いながら時間的な距離になぞらえて、恋しさを募らせる歌です。「スフィンクス」「クレオパトラ」「ヒエログリフ」といった遺跡に関する単語も多く登場します。イントロは心臓の鼓動を表したバスドラムのリズムから始まり、ナイロン弦のふくよかな音の均一なアルペジオが奏でられます。
さっそく歌詞を見てみましょう。
地平はるかに 赤い星煌めいて
ナイルは銀河に 注ぎ始める
さだまさし ナイルにて – 夢の碑文 – 歌詞 – 歌ネット:https://www.uta-net.com/song/119104/
むむ。「赤い星」なるものが登場しました。これは何の星でしょう。赤い星というと、何を思い浮かべますか?さそり座のアンタレス?オリオン座のベテルギウス…?
歌詞の内容が古代エジプトを題材にしていることから繙くと、その星の正体は「シリウス」なのでは?と私、くぼたは推測しました。
しかし、「赤い星」というのは何か違和感がありませんか?実際に夜空を見上げても見えるのは青白い色をしたシリウスですよね。
古代ローマの複数の古文書などには、シリウスが「赤い」と表現されている記述が見られるのです。ローマの詩人セネカは「火星より赤い」とさえ記しています。これは「シリウス・ミステリー」とも呼ばれ、その真相は謎のままです。
「赤い星」の謎に迫る説がいくつか囁かれています。たとえば、現在、白色矮星となっているシリウスの伴星「シリウスB」。この星はその昔、赤色巨星となっていた時期があります。実はこれが赤く見えていた?という説ですが、これは今から1億年以上前のこと。人類の歴史と合いません。もうひとつ、古代ローマ時代にシリウスの手前を赤い星雲が横切っていたされる説もありますが、そうすると今のように明るく見えるのでしょうか…?赤い星雲は今どこへ…?う~ん、不思議ですね。
さて、歌詞の内容に話を戻しましょう。
古代エジプト人は日の出前に昇るシリウス(ヒライアカル・ライジング)を観測し、ナイル川の氾濫の時期を予測していたと言われています。ナイル川の洪水は大地を肥沃にし、作物のを育てたり収穫したりする時期に影響を与えます。日の出直前すなわち高度の低いシリウスを見ると、夕日と同じように赤く見えることでしょう。これもまたシリウスが「赤い星」と言われていたとされる一説です。ナイルとシリウスは、縁深い関係にあったのですね。そして、彼らは(観測誤差はあったものの)、ヒライアカル・ライジングがほぼ365日周期で訪れることを知っていたようです。
ひろせです。興味深い歌詞ですね。せっかくなので、もう少し補足して説明してみましょう。
「昔はシリウスが赤かった」という説が真面目に議論されてきたのは、セネカといった文筆家のみならず、近代以前の西洋(とイスラム文化圏)では最大の権威を誇った天文学者であるプトレマイオスが『アルマゲスト』(西暦140年ごろ)の中でシリウスを「赤っぽい」と記述しているからです。そのプトレマイオスが活動したのは、奇しくもナイル川の河口付近に位置する都市アレクサンドリアでした。
ただ、1980年代からはこの問題に疑問を投げかける論文が相次いでいます。今では、天文学者と歴史学者のどちらを見ても、昔のシリウスが本当に赤かったと考える方は少数派ではないでしょうか。何といっても、古代中国の文献ではほぼ一貫してシリウス(狼星)が白い星であると記述されている事実があります。また、古代ギリシアやローマにもシリウスが白いことを示唆する文献があります。
なんと!これは無視できない記述ですね。一部の興味を引く事実にだけ着目するのではなく、視野を広げて様々な情報を参考にすることは大切ですね。
赤いシリウスの研究史をまとめた米国の研究者R. C. Ceragioliさんによれば、ヒライアカル・ライジングのときの大気に影響されたシリウスの色が、何らかの事情で星固有の色として記録されたと考えるしかありません。なお、Ceragioliさんは、20世紀半ばに「シリウス・ミステリー」が盛り上がったのは学術的な関心からというより、人々がセンセーショナルな話題を求めた結果だと指摘しています。
シリウスの色問題は天文への関心を持っていただく入口としては面白いのですが、扱いには慎重になるべきですね。
天文学の歴史もいろいろな見方があって非常に興味深いですね。ところで、せっかく紀元前後のシリウスの話題が登場したので、「ステラナビゲータ11」でその頃の星空を再現してみましょう。試しに紀元前60年のナイル川流域に行ってみます。
オリオン座のベテルギウス、三つ星はすぐに分かりますね。そこから目線を下げていってみましょう。あ、大気の影響で赤い星となったシリウスがありましたね!古代エジプト人も、現在とほとんど変わりのない星の並びを見ていたのだと考えると、ロマンがありますね。
いやあ、まさか「赤い星」がシリウスだったとは、びっくりぽんですね……
ちょっと、待ったあああ!
おっと、どうしましたか!?
私個人としては、この赤い星が火星である可能性を提唱したいです。というのも、エジプトの首都カイロは「地平線上の火星」と縁があるとされているからです。
なんですって!?詳しく教えてください。
西暦969年、チュニジアからエジプトを征服したファーティマ朝の第4代カリフ・ムイッズは、将軍ジャウハルに命じてこの地に都を建設しました。新都の名前はアラビア語で「勝利者」を意味する「アル・カヒーラ」となったのですが、この語には「火星」という意味もあります。火星は戦争と結びつけられがちな惑星ですしね。
残念ながら当時の文献に「アル・カヒーラ」という名前が付けられた経緯は載ってないのですが、14世紀の記録には、カイロの建設を開始するタイミングとして、火星が東の地平線に昇る瞬間が選ばれたという逸話があります。中世のイスラム文化圏では、ホロスコープを使って工事などの大きなイベントを開始するタイミングを決めていたのは事実です(その計算には前述の『アルマゲスト』の理論が使われていました)。この話も全くのデタラメとは決めつけられません。
エジプトと言えばピラミッドが建設された太古の時代ばかりが連想されますが、その歴史の大河の流れにはプトレマイオスが活躍したローマ時代やカイロが建設された中世もあります。私たちが「エジプトらしい」と感じるメロディーも実はイスラム時代の影響を強く受けているわけでして、「はるかなる時の都で」という歌詞には実に重みがあります。そこへ「私はあなたとの ほんの一瞬が 恋しい」と続くのがすばらしい!
う~む。おもしろすぎます!ちなみに、アルバム「夢回帰線Ⅱ」のライナーノーツを読んでも「赤い星」について言及はありませんでした。わくわく。想像が広がりますね!
<主な参照文献>
・Ceragioli, R. C., “The Debate Concerning ‘Red’ Sirius” , Journal for the History of Astronomy, Vol. 26 (1995) Issue 3, pp. 187-226, http://articles.adsabs.harvard.edu//full/1995JHA….26..187C/
・Ceragioli, R. C., “Solving the Puzzle of ‘Red’ Sirius” , Journal for the History of Astronomy, Vol. 27 (1996) Issue 2, pp. 93-128, http://adsabs.harvard.edu/full/1996JHA….27…93C
♪ 十六夜(1990年)
歌詞全文:https://www.uta-net.com/song/96215/
アルバム「夢ばかりみていた」に収録。主人公たちが焚き火の日を囲みながら、酒を酌み交わし、酔い、盛り上がる様子を粋に綴った歌です。「十六夜」と書いて「いざよい」と読みます。「いざ酔い(さあ、酔おう)」とかかっているのも小粋ですね。
さだまさし氏の楽曲の中には、月が出てくる歌は他にもいくつもあります。全ては挙げられませんが、少し思いつくだけでもこんなにあります。
歌詞を見てみましょう。
火をおこせ 木をくべろ 今宵は十六夜
さだまさし 十六夜 歌詞 – 歌ネット:https://www.uta-net.com/song/96215/
月の姿にはいろいろな呼び名がありますね。「三日月」「上弦の月」など聞き慣れたものから、「居待月」「寝待月」など風情を感じるものまでさまざまです。楽曲のタイトルにもなっている「十六夜」は新月から数えて16日目ごろの月の呼び名です。
「十六夜(いざよい)」という読み方は、古語の「いさよふ(猶予ふ)」の名詞です。これは「躊躇う」「進まないで止まりがちになる」という意味で、前日の満月より50分遅く昇ってくる様子がそのように見えたことから名付けられたと言われています。つまり、当て字ですね。
このように「十六夜」は毎月、満月の次の日にやってきます。しかし、旧暦8月15日の「十五夜」が有名なように、一般的に「十六夜」といえば旧暦8月16日の月を指すことが多いですね。
望遠鏡とカメラを使って写真を撮ると、のっぺりとした月が少し欠けている様子が分かります。
楽曲のタイトル「十六夜」以外にも天体が登場します。
あれは土星か 木星か さて螢か幻か
さだまさし 十六夜 歌詞 – 歌ネット:https://www.uta-net.com/song/96215/
おやおや、いい感じに酔ってきているようですね。この1行だけで非常に趣のある詩になっているように感じます。では、せっかくですので、1990年に土星と木星が見えている十六夜を探してみましょう。
蛍の季節を考慮に入れると6月初旬の夜に、まさに歌詞に登場するような夜空を仰げたようです。残念がら、木星はまだ昇って来ていません。主人公が見たのは土星か螢か幻か、ということになりそうですね(ほんとかな?)。
豆知識ですが、木星と土星の会合周期(一度並んでから、次に並ぶまでの時間)は約20年、今年はちょうど木星と土星が並んでいる年なので、その30年前である1990年は残念ながら木星と土星がちょうど天球の反対方向にいることになります。やっぱり木星じゃなくて蛍が見えているのかもしれませんね……
「ステラナビゲータ11」では星図の横に「今日の暦」を表示することができます。カレンダーに月の形が表示されるので、天体観測の予定を立てるときにも便利です。今回は、ざっくりと日時にあたりを付けた上で、このカレンダーから満月の日を探し、その翌日を「十六夜」として指定してみました。
ちなみに、1990年6月で「旧暦十六日」にあたるのは8日です。旧暦は新月の日を一日としてカウントするので、「十六夜」が実は満月だというのは珍しくありません。
個人的にさださんの歌の中で特に好きな歌詞です。終始温かい言葉選びや掛詞、友に語りかけるような口調。私自身は下戸でお酒も飲めないはずなのに、あたかも皆で同じ火を囲んでいるかのような気持ちになります。人生讃歌のひとつとみてもよいでしょうか。この感染症の騒動が落ち着いたら「ふがいなき友」と一緒に夜空の下で語り明かしてみたいものです。
♪ 夜間飛行 〜毛利衛飛行士の夢と笑顔に捧ぐ〜(1992年)
歌詞全文:https://www.uta-net.com/song/64353/
アルバム「ほのぼの」に収録。1992年、日本人で初めてスペースシャトルに搭乗した宇宙飛行士、毛利衛氏に捧げて作られた歌です。主人公が夢の中で風になって街を飛び回り、子供の頃に抱いていた夢や希望を思い出します。そして、現実の自分自身も鼓舞される、そんな内容です。歌詞の中には「銀河鉄道」「リンドバーグ」など、さだまさし氏が青年時代に影響を受けた作品や人物にまつわるキーワードが登場します。また、アルバム「ほのぼの」はギタリストの石川鷹彦氏と共に行った音作りが特徴的で、この楽曲もアコースティックギターが爽やかに輝き、開放弦を使ったサウンドは浮遊感や高揚感を生み出しているように感じます。
1番のサビの歌詞を見てみましょう。
夜空にはエンデバー無重力の満月
サソリづたいに銀河鉄道
さだまさし 夜間飛行 〜毛利衛飛行士の夢と笑顔に捧ぐ〜 歌詞 – 歌ネット:https://www.uta-net.com/song/64353/
「エンデバー号」は毛利衛氏が乗り込み、ミッションをこなしたスペースシャトルです。機体は既に引退しています。全25回のミッションの中で、のべ148名の飛行士を運びました。日本人宇宙飛行士は毛利衛氏のほかに若田光一氏、土井隆雄氏もこれに搭乗しています。さだまさし氏は毛利氏の笑顔に勇気づけられてこの楽曲を書き、毛利氏はアルバム「ほのぼの」を船内に持ち込んだとか。
また、毛利さんといえば「宇宙から月をよく見ていた」というエピソードでも知られています。その上で歌詞を深読みすれば、「無重力の満月」というフレーズにも毛利さんの面影が思い浮かべられますね。
毛利衛さんはエンデバーで微小重力環境下における様々な実験を行ったことも報道されていたことを記憶しています。「エンデバー」の名は、民間宇宙企業のスペースX社が開発した有人宇宙船「クルードラゴン」の有人飛行第1号機に引き継がれました。来年は同機に星出彰彦宇宙飛行士が搭乗して国際宇宙ステーションに向かう「夜間飛行」を見せてくださることでしょう。
私も毛利さんには思い出があります。小学校に上がりたての頃、スペースシャトルに憧れていた時期がありました。NHK の特集番組を VHS に録画し、擦り切れるほど繰り返し見たり、学習机に毛利衛さんの顔写真(新聞の切り抜き)を貼ったりしていたほどです。当時、スペースシャトルの外部燃料タンクの高さを調べて、その大きさに胸を躍らせ、近所の鉄塔を見つけては高さを測り、「あ~スペースシャトルはこの鉄塔の○倍なんだな~」と感慨に耽る、チョット危ないチビくぼたなのでした。
番外編
♪ September Moon ~永遠という一瞬~(2002年)
歌詞全文:https://www.uta-net.com/song/65410/
アルバム「夢百合草(あるすとろめりあ)」に収録。本記事の公開日、9月11日は「アメリカ同時多発テロ事件」が起きた日でもあります。この楽曲は、まさにその 9.11 を歌ったものです。
下弦の月が傾く東京
人ごとのように過ぎていく平和
さだまさし September Moon ~永遠という一瞬~ 歌詞 – 歌ネット:https://www.uta-net.com/song/65410/
今回使用したソフトウェア
本記事では、楽曲の考察に天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ11」を使用しました。
「ステラナビゲータ11」は、今夜の星空や星座、惑星の様子はもちろん、過去から未来までの20万年間に起こるあらゆる天文現象をリアルに再現できる、Windows用天文シミュレーションソフトウェアです。
おわりに
気合の入りすぎた企画、シリーズ「天文×さだまさし」の第2回、お楽しみいただけたでしょうか?
天文の世界も、さださんの”わーるど”も奥深くて非常に興味深いですね。
また来週、第3回を公開予定です!乞うご期待くださいませませ!
関連情報
・さだまさしオフィシャルサイト
・ステラナビゲータ11 – StellaNavigator11