部分日食でした ~何も見えなくて…夏~

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概要

 2020年6月21日(日)、夏至の日の夕方16時ごろから18時ごろにかけて、日本全国で見られた部分日食。弊社でもその様子を撮影、配信するため東京都世田谷区の砧公園へ赴きました。その顛末やいかに―。

2020年6月21日 部分日食のシミュレーション(札幌・東京・那覇での見え方)

機材の準備

さあ、部分日食だ!今回は YouTube で生配信もしながら、しっかり現場で自分も楽しむためにいろいろ準備していくぞ!

基本的な機材

 今回は下記のような構成にしました。せっかくなので望遠鏡と赤道儀は会社の機材を借りてきました。眼視も楽しみたかったので、双眼鏡と日食グラスも加えました。

  • 望遠鏡  :BORG 71FL
  • 赤道儀  :タカハシ Temma2M
  • カメラ  :Canon EOS Kiss M
  • 双眼鏡  :SVBONY SV39
  • 日食グラス:アストロアーツ日食グラス
    • 現場の見物客に使ってもらうものも含めて5枚ほど用意しました

 その他、今回は YouTube で生配信も行うということで、ノートPCやモバイル Wi-Fi 機器、配信ソフト(OBS Studio)、ライブビュー用に Canon カメラのリモート制御ソフト EOS Utility などを用意。事前の動作確認もばっちりです。

フィルタの準備

 部分日食もとい、太陽の観察はその強烈な可視光や有害な光線ゆえに危険を伴います。今回は望遠鏡と双眼鏡用に D5(1/100000 に減光)ほどの濃度のフィルタを準備します。

望遠鏡と双眼鏡の対物レンズの先に取り付けるために、フィルタ枠を作っていきます。

さて、ここから奮闘記らしくなってきます。

 まず、望遠鏡すなわち撮影用のフィルタには温かい色合いに写る「ケンコー PRO ND100000(丸枠)」を選びました。BORG 71FL の対物レンズサイズには合わないので、ステップアップリングの役割を果たす何かを作って取り付ける算段です。これは撮影専用で眼視には使用できないので要注意です!

 双眼鏡の眼視用には自由自在に切り取り加工可能な「アストロソーラーシート 眼視用 ND-5(20×29cm)」を選びました。有害な紫外線や赤外線などもカットしているので、青白く冷たい色合いに写りますが、お手頃価格で撮影や眼視のいずれにも使えます。

アストロソーラーシート 眼視用 ND-5(20×29cm)バーダープラネタリウム社製

これは2019年の皆既日食前に、それぞれのフィルタを使って試し撮りした太陽です。

クッキーみたいで、美味しそう…!

まあ、日“食”っていうくらいだからね!

(あ、親父ギャグだ…)

 ここで問題が発生。

 「ケンコー PRO ND100000(丸枠)」が見当たりません。最後に使ったのは約1年前の皆既日食の時です。まさか、チリに忘れてきたか…?会社に置きっぱなしか…?

 既に部分日食の前夜です。これ以上時間をかけて探す気分にもなれず、今回は望遠鏡のフィルタも「アストロソーラーシート」で作ることにしました。

 ダンボールで円筒を作り、両面テープでソーラーシートを貼り付け、ガムテープで補強というお決まりのパターンで望遠鏡用のフィルタを作成しました。ちょっと美しくないですが、まあ、必要十分でしょう。

 さて、今度は双眼鏡用のフィルタを作ります。先ほどの望遠鏡のフィルタより少し小さいもの2個作ればよいのですが、同じようにダンボールを使うと少しゴワゴワして精密さに欠けそうです。しかも、厚紙なんて気の利いた材料を今回は揃えていません…。

 ふとキッチンに目をやると、こんなものがありました。

持て余していた紙コップ。今日は君がヒーローだ!

 あれ、これはもしかすると…?

ためしに紙コップの底を切り取ってかぶせてみた。机の上がごちゃごちゃしているのはご愛嬌。

サイズがぴったりだ…!

 子供の時分に TV で見ていたワクワクさんのように、チョキチョキ、ペタペタと工作して簡単に同じサイズのフィルタを2個作ることができました。どうしても、はめ込み部分が浅いので、これは当日養生テープで固定して部分日食中は安全のため外さないようにします。

 はじめに予定していたフィルタが行方不明になるというトラブルはあったものの、なんとか前日中に全ての準備完了。あとはお天気ですね。

いざ、撮影場所へ

 2020年6月21日(日)。予報は曇り。自宅では日差しを確認。車に機材を積み込み、意気揚々と東京都は世田谷区、砧公園に向かいます。

 大きな幹線道路を走行中、だんだんと暗くなっていく空。太陽も雲越しの弱々しい光になってきました。少し不安がよぎります。

 砧公園に到着!

公園内を少し歩いて撮影場所を探す。

(こんなにも人の多い公園だったのか…)
(しかも、駐車場から広場まで結構歩くぞ…)
(もっと小さな赤道儀にすればよかった…)

 新型コロナの自粛の揺り戻しか、公園は大勢の家族連れなどで賑わっていました。まず、適当な広場の隅っこに目星をつけ、機材をえっちらおっちら運びます(タカハシ Temma2M は 16kg くらいあります)。傍から見ると明らかに怪しい人ですが、ひと目は気にしていられません。

広場に入り口に「テーブル・イスの持ち込み禁止」の看板を発見したので、今回は適当なシートを敷いて作業することに。

 平和な日曜日の午後。おだやかな風景にこの機材はやはり少しだけ目立つらしく、通りすがり方から声をかけられました(詳しくは余談にて)。

部分日食!YouTube で生配信

 お天気は回復の兆しを見せません。むしろ、どんどん雲が厚くなり太陽の位置すらも正確に把握することができない状態です。

スマホのコンパス・水準器アプリを使って赤道儀の極軸をざっくりと合わせる。太陽の影を使った導入ができなかったので、ステラナビゲータ11 と赤道儀を接続しておおよその方向に向けることに。

 ひとまず YouTube の配信を開始しました。前述の通り、周囲は大勢の人で賑わっていたため、プライバシー保護の観点からウェブカメラやマイクを使った実況は断念しました。あれよあれよという間に、部分日食の第1接触時刻が近づいてきます。

2020年6月21日 部分日食 東京から生配信(アーカイブ)

 初めての配信ということもあり、内心「実験的な感じでよかろう」とたかをくくっていたのですが、いざ開始してみると同時視聴者数が20人 → 30人 → 90人 → 200人 → 350人と、どんどん増えていきます。

 弊社 Twitter 担当者が生配信の様子をツイート。これにより、さらに多くの方に見ていただくことになりました。

せっかく皆さんに見に来ていただいているのに、曇り空で何も写せなくて申し訳ない…。

 本物の太陽は写せないけれど、せめてもの気持ちとして「エクリプスナビゲータ4」によるリアルタイムのシミュレーションを配信することにしました。

YouTube Live による生配信の様子(画像はアーカイブ映像)。

 そして、最大食になるころには950名以上の方が同時視聴、同じ空を眺めていました。

 YouTube ライブのチャットには北は北海道、南は沖縄まで全国各地の方が「こちらも曇っています」「少し見えました!」「こっちは晴れています」といった報告を寄せてくださり、大いに盛り上がりました。

 中の人(=すなわち今回は私)はこういう場合、あまり表に出ないのがセオリーかとも思いましたが、声で実況できない分、名乗った上で積極的にチャットに書き込み、視聴者の方との相互のコミュニケーションを図りました。その結果、臨場感を持った2時間50分になったのではと考えています。

 第4接触後も400名以上の方が残ってくださっていました。拙い生配信ではありましたが、こんなにも長時間、大勢の方にご視聴いただき本当にありがとうございます。この場を借りて感謝申し上げます。

余談

 望遠鏡を設置していると、通りすがりの方々が声をかけてくださりました。その中でもエモーショナルで印象的だったやりとりを簡単に紹介したいと思います。

 ★ 70代後半の男性

部分日食?うちにも望遠鏡を持っているよ。

星をよくご覧になるんですか?

いやいやもう、置いてあるだけ。60年前は鎌倉からも天の川が見えたもんだよ。

へぇ~今よりずっと街灯りが少なかったんですね。

それにしても、この公園は変わったことをしてる人が多くて面白いんだよ。この前は、(楽器の)トライアングルを作ってる人がいたよ。そして今日は君がいたよ。

ありがとうございます\(^o^)/

 ★ 小さな女の子とお母さん

何が見えるんですか?

部分日食が見えるはずなんですけど、曇っていてなかなか見えませんね(´・ω・`)

(PC画面のシミュレーションを見ながら)ほら、太陽がお月さまみたいな形になってるね~

…。(無言)

お日さまの前にお月さまがやってきて、お日さまを隠しちゃってるんだよ

 双眼鏡用のフィルタ2個を月と太陽に見立てて、重ねながら説明するもなかなか伝わらない様子。

ちょっとむずかしいかな(^^;)

“Solar Eclipse” だって!(外国人のご主人に向かって)

 しばらくして―

ほら、お兄ちゃんに「Solar Eclipse 見せてくれてありがとう」って。

…。(無言のまま小さな花を差し出す)

女の子がお母さんに促されて(渋々?)手渡してくれた花。
おじちゃん嬉しかったです。

ありがとうね~ m(_ _)m

 部分日食こそ見ることはできませんでしたが、こうした見知らぬ人との一瞬の交流に報われた気がします。天文現象を通じた様々な体験が良き思い出になっていくものですね。

みなさんの地域から、今回の部分日食を見ることはできましたか?

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