車の後部座席をフラットシート化~DIY~

この記事は約6分で読めます。
くぼた
くぼた

ソフトウェア技術部のくぼたです。より快適な天体撮影を求めて、僕の愛車マツダ「デミオ」の後部座席を、DIY でフラットシート化してみました!

はじめに

 ベランダ撮影も地に足の着いた運用ができつつありますが、それでもなお自動車に機材を積んで近所の川べりへ撮影に行ったり、はたまた遠征したりという楽しみも捨てたわけではありません。

 望遠鏡、赤道儀一式をプラスチックケースに格納し、折りたたみカートに縛り付けてアスファルトの上をゴロゴロひた歩いていたあの日々に比べれば、車に積んでブーンッとひとっ走りできるだけでも、月とスッポンの快適さなのであります。

望遠鏡、赤道儀、三脚を転がして電車移動していた頃

 しかーし、人間とはわがままなものでして、

  • 遠征先で横になって体を休めたいな
  • 長い望遠鏡を楽々積みたいな

などという欲望、よく言えば「向上心」が芽生えるわけです。

 これまでは助手席を引いて広い空間を作ったり、後部座席を倒して段差を騙し騙し毛布などで埋めたりして、くつろぎを求めていました。しかし、我が向上心はそれに甘んじることを許しませんでした。

 

 少し話は戻りまして―。

 フラットシート化のきっかけは健康診断。今年の2月に受診してまいりましたが、幸か不幸か身長に変化なし(※)!すなわち、成人男性としては比較的コンパクトな私には愛車「デミオ」の後部座席で足を伸ばして寝ることができるポテンシャルが残っているということにほかなりません。

 仮に「去年より 10cm 伸びていた!」なんてことがあれば、確実に足がつかえるので、また考えは違ってきていたはずです。

(※) :体重は、えーっと…えーっと……

自分で作ろう、フラットシート

 後部座席をフラットシート化する純正品もあるようですが、せっかくなので素人工作ですが自分で作ってみることにしました。内寸を測り、イレクターパイプやジョイント、合板、マット等を発注。全部で1万5000円弱だったと思います。あれこれ考えたり、実際に組み立てる楽しみを換算したら実質タダみたいなもの♪(楽観的)

 事前の計測に基づいた設計と部品の組み合わせが、実際と違う部分もあり、なんとかその場しのぎで再設計……というより、ほぼ現物合わせでイレクターパイプを一部カットし直していきます。

長めのイレクターパイプを適宜カット

あとは、組み立てて……

撤去できるようジョイントの接着は部分的に実施

合板を敷いて簡単に固定して……

合板はカットせずに重ねてテープで固定のみ

マットを敷き詰めてこれも簡単に固定。余ったマットを使って車内の壁と合板、イレクターパイプが接触しそうな部分を養生してひとまず完成です!

マットは滑り止めにもなります

10cm F15 の長い屈折望遠鏡も、対角の長さにしっかり収まりました。

 ごろんと寝転がってみると、さすがに大の字にはなれないものの、段差の違和感もなくいい感じ。ちょっとした布団を持ち込めば、冬場でも快適そうです!

いざ、機材を積んで撮影へ!

 無事、デミオの後部座席をフラットシート化できたその日、ちょうど晴れていたのでいつもの川べりへ撮影にでかけてみました。普通に運転していれば、機材が揺れ動くこともなく(もちろん、簡単に固定をしているので)運搬自体は問題なさそうです。

 現場に到着し、ドアを開けて機材を取り出します。イレクターパイプで数cm底上げしてフラット化したため、ちょうどマットの位置が腰の上あたりになります。赤道儀などの重い機材を持ち上げる際に大きく腰を曲げて「よっこらせっ!」と力を入れる必要がなくなったので、非常に体力的に楽です。特に暗い中での作業なので、それが際立って感じられます。当初、こんなメリットは想定していませんでしたが、嬉しい誤算でした。それから、マットの下にも空間があり収納スペースが2段になったので、「細々したものはこっちへ」といった整理整頓も捗ります。

 ともあれ、望遠鏡を設置しました。

天頂付近の付きを撮影中。鏡筒の対物レンズは背丈より高い位置に

 10cm・F15 の望遠鏡を自動導入で振り回すと、やはり圧巻です。慣れるまでもう少しかかりそうです(笑)。こちらの望遠鏡については、別記事「幻のアストロアーツ望遠鏡で火星観望!」をご覧ください。

鮮明に写る月

 今回は「ZWO ASI294MM Pro」というモノクロ冷却CMOSカメラを、延長筒1個+31.7mmスリーブに差し込んで取り付けました。まずは、画角いっぱいに月を入れて撮影します。動画を撮りたかったので「SharpCap Pro」を使用しました。

SharpCap Pro で付きを動画撮影

 ピントを合わせて…露出を調節して……ええっ!こんなにカリカリに写るのかい!と驚嘆しました。やはり、正しく作られたFの大きな望遠鏡はよいですね。そして、以下は1分ほどの動画を後ほど、ステライメージ9でコンポジットしてレベル調整、アンシャープマスクを少し強めにかけた画像です。もう少しピントをきっちり合わせられたかと思いますが、個人的には面白いほどの写りです。

シリウスAとシリウスB

 続いて、シリウスに目標を移します。特に、ここ数年はシリウスの伴星「シリウスB」の離角が約11秒角と大きく、観測の好機です。そうはいっても、主星の「シリウスA」とは光度差も大きくシーイングその他の要因にも影響されやすいため、見る・撮るには難物とも聞いています。

 しかし、この10cm・F15の望遠鏡とフォーサーズサイズのモノクロ冷却CMOSカメラを使えば、もしかしたら直焦点撮影でその存在を確かめられるかもしれないと思い、実験的に撮影してみようと思い立ったのです。

 結論から申し上げますと、シリウスBは全く写りませんでした……!
あとでコンポジットして分離した星像が確認できれば、というレベルにも至らず……。

 この日に捉えたシリウスの星像は、風とシーイングの悪さで狂喜乱舞状態。望遠鏡の長いこともあり、少し強い風が吹くとビュンビュンとシリウスは揺れ動きます。風が落ち着いたかな?と思っても、チラチラと像は安定しません。

 また、予想はしていましたが -1.4等のシリウスAと8.4等のシリウスBとの明るさの差は凄まじく、シリウスBと同じくらいの明るさの星に露出を合わせてシリウスを写すと、すっかりシリウスBは飲み込まれていまいました。もう少し、合成焦点距離を長くして再チャレンジしたいと思います……。

しかし、このまま帰るのは悔しいですね。

 せっかく生のシリウスを「電視観望」しているので、昨年の記事「天文×さだまさし」宇宙の歌を聴いてみよう!(第2回)でご紹介した、さだまさしさんの楽曲「天狼星に(シリウスに)」をギターで弾きながら観望しようと思いま立ちました。

 いそいそとギターケースから YAMAHA のアコースティックギターを取り出し、周囲に人がいないことを確認して、万感の気持ちを込めてシリウスを見ながら「天狼星に(シリウスに)」を弾き語ったのでした。 うむ。満足、満足。酔狂、酔狂……。

揺れるシリウスを観望しながら「天狼星に(シリウスに)」を歌うくぼた
くぼた
くぼた

天体写真は撮影そのもののみでなく、その周辺の奮闘もまた楽しいものですね。

関連情報

タイトルとURLをコピーしました