プラネタリウム事業部のお仕事
デジタル式プラネタリウムソフトウェアの開発
弊社が販売しているデジタル式プラネタリウムはシーンに合わせた5つの製品があります。プラネタリウムと言われると、一番に科学館等にある大きいドームが思い浮かびますが、実はみなさんが思っている以上に色んな場所にあるんですよ。
・ステラドームプロ ・・・ ドーム径の大きな施設用のソフトウェア。複数のプロジェクタの分割投影に対応していて、高解像度のデジタル映像をドームに投影できます。「ステラナビゲータ」で培われた定評ある描画エンジンを採用し、正確な天体の位置計算や正確な空の表現はもちろんのこと、地球外の視点でのシミュレーションまでを行うことができます。
・ステラドームモバイル ・・・ 移動式プラネタリウム向けのソフトウェア。演出に関する機能は「ステラドームプロ」と同様ですが、移動式プラネタリウムは基本的にプロジェクタは1台なので、補正機能は付いていません。
・ステラドームスクール ・・・ 学習指導要領に沿ったプラネタリウム番組制作用のソフトウェア。予め用意されている演出パーツ(星座線を表示、21時まで日周など)を子どもたちが自由に時間軸に並べていくだけで番組を制作することができます。完成した番組を校内で発表しあう、連携しているプラネタリウムで発表投影もされています。
・ステラプロジェクタ ・・・ 移動式投影・スクリーン投影用のソフトウェア。大型テレビ、またはプロジェクタがあればドームがなくてもプラネタリウムを投影することができます。天体観測会の事前解説から雨天の場合の補助投影まで、さまざまなシチュエーションで活躍します。
・ステラミニ ・・・ 来場者が自由に操作できる参加型展示用のソフトウェア。設置されているゲームコントローラーやタブレットを使い、設定した日付の星空を見ることができます。クイズに沿って星を見つけたり、自分の好きな星座を見つけてみたり、展示のテーマによってさまざまな使いこなしができます。
これらはすべて「ステラナビゲータ」の技術が元になっており、2009年から開発を進めて今では全国に70館以上の導入実績がある製品になりました!
システムの新規納入、リニューアル、メンテナンス
新しくプラネタリウムがオープンする場合や、今まで光学式のみでデジタル式が入っていなかったなどの理由でステラドームを新規に納入することをそのまま「新規納入」、ステラドームがすでに入っている状態で古くなったプロジェクタやPCなどの機器をより性能の良いものに更新することを「リニューアル」とします。(下の図はあくまでも一例を簡易的に表したものになります。)
新規納入とリニューアルにあたっての作業はほとんど同じです。まずは、社内や先方と打ち合わせを重ね、下見をし、購入する機器や作業の日程を決定します。日程は案件によって異なり、1泊2日ですぐ終わることもあれば、5泊6日くらいしたり、何回かに分けて訪問することもあります。現場作業日が近付くと続々と機器が会社に到着するので、初期不良が無いか動作確認をし、PCにはステラドームをインストールしておきます。
現場作業日になると、車・電車・新幹線・飛行機を駆使して現場へ移動します。弊社(東京都渋谷区)から遠く、作業開始の時間が早朝だったりすると、前日に移動し、ビジネスホテルで一泊して朝に現場入りすることもあります。
個人的にはチェックインの瞬間が大好きです!「ここが今日からの秘密基地か・・・」とついニヤニヤしてしまいます。ホテル周辺の美味しい料理屋さんに行ってみたり、はたまたコンビニで適当にお酒とおつまみを買って、部屋で一人の時間を楽しむのも最高ですね。
無事に現場入りできたら、まずは機器の設置・配線から始めます。余談ですが、とある案件でプロジェクタを設置するために壁を削らなければいけなくなり、ソフトウェア事業本部のつのださん(生粋のプログラマー)が工事に駆り出されていました。
(必死に壁を削っている)
(つのださんの背中を見て) 自分達の職種は一体なんなのだろうか・・・。
うーん…。
機材の設置が完了し、プロジェクタの電源を入れます。フォーカスや明るさといったプロジェクタ本体の設定を行ったあと、いよいよPCにインストールされたステラドームを起動して星空を投影します。星空が投影できたのでこれにて作業終了!・・・と言いたいところですが、ジオメトリ調整と呼ばれる非常に重要な作業がまだ残っています。
ジオメトリ調整とは、ざっくりと説明するとドームの形に合わせた映像の調整です。中でも肝になるのは、より鮮明に星空を投影できるようにプロジェクタが複数台設置されている場合における、ブレンディングエリア(つなぎ目)の調整です。ブレンディングエリアの調整が不十分だとプロジェクタ同士の映像にズレが発生し、せっかくのプラネタリウムが汚くみえてしまいます。
上の十字マークらしきものがたくさん並んでいる写真が、ドームの中でジオメトリ調整を行っている様子です。詳しくはお話できないのですが、作業としてはこの十字マークをひたすら、ちまちま、動かしていく(なんとも地味な)作業です。十字マークを動かし終わったら、ステラドームの自動計算ボタンをぽちっとするとあら不思議。内部で何やら計算をして、イイ感じに映像を補正してくれます。
かみやまさん、計算ってどんな計算なのでしょうか?
十字マークを動かしたときの変化量を〇✕✕〇△△□〇✕✕〇として、次に△△□〇✕✕〇△△□〇✕✕〇△△□をすると、映像がうまい具合に変形できるんだ。
む、むずかしい・・・そしてこれは企業秘密だっ
映像が綺麗に投影されるようになったら、次は動作確認です。光学式プラネタリウムとデジタル式プラネタリウムが連動しているシステムであれば、ステラドームを操作して光学式が連動するかどうかを念入りに確認します。また、ステラドームのサウンドが音響機器から出力されているか、投影開始前の立ち上げ手順・投影終了後の立ち下げ手順を繰り返して不具合がないか等の確認も忘れてはいけません。動作確認が完了したら、残るは操作説明です。すべての作業が完了したら、晴れて納品作業は終了です。
さて、運用が開始したら、施設によってまちまちですがおおよそ年1回のペースでメンテナンスへ行きます。大きい作業としてはジオメトリ調整・システムアップデートの2つ。「導入時にジオメトリ調整やっていたはずでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。プロジェクタ本体を動かしていなくても、季節の移り変わりによる寒暖差の影響で、プロジェクタを設置している土台であったり、ドーム全体が膨張収縮したりして、映像にズレが発生してしまうのです。プロジェクタ本体が数mm動くだけでも、ズレとして目立ってしまいます。プロジェクタ同士の映像をぴったり合わせるのは、本当に高度な技術だなと作業をしながら感じています。
システムアップデートでは新機能が追加されるので、「どんな反応がくるか!?」とこっそり緊張しています(笑) つい最近ではベテルギウスを超新星爆発させたりできるようになりました。(神の手!)
操作研修、問い合わせ対応
オプションとして初回操作研修や数カ月後のフォローアップ研修を行ったりもします。初回の研修では「とりあえず投影ができれば・・・」と不安そうだった方々が、数カ月後に「オリジナル番組を作ってみました!」とお披露目されることもあります。オリジナル番組は、話の展開はもちろん、スクリプトの組み方にも個性が強烈に出るので、私は毎回刺激を受けて帰ってきています。
また、操作方法やスクリプトに関するお問い合わせメールもよく来るので、サポート業務として日々対応しています。
できることが増えてきました!と言われると本当に嬉しいです。
提案書や見積書などの書類作成
普段会社にいるときは提案書や見積書などの書類作成もしています。新卒で入社したばかりは「金額の大きな書類は怖くて触れない・・・」とビビりがちだったのが、今では予算申請時期の10月、契約締結時期の年度明けは大忙しになるほど、書類をさばいています!
と言っても、まだ初めて知ることもありますが、なんとか頑張っています
2019年のスケジュール
最新の事例として2020年のスケジュールについてお話したいところですが、新型コロナウイルス感染症の影響で外出自粛を余儀なくされ、かなりイレギュラーな年になってしまいましたので、今回は2019年のスケジュールについてお話したいと思います。ただし、全部の案件をご紹介していくと長くなってしまいますので、私が作業に加わったものだけをピックアップしています。
1月
和歌山市駅から徒歩10分程度のところにある、和歌山市立こども科学館さんでステラドームの新規納入がありました。今回の目玉はなんといっても、コニカミノルタプラネタリウム製光学式プラネタリウム「CosmoReapΣ」とアストロアーツ製デジタル式プラネタリウム「ステラドームプロ」の連動システム!初の事例ということもあり、開発は2018年9月頃から始められ、打ち合わせに打ち合わせを重ねて仕様が決められていきました。
ちなみに、私は機器の設置や光学式との調整が済んだ後のジオメトリ調整から参加しました。最初から現場入りしていたかみやまさんは光学式との連動にかなりこだわって作業されていたようです。
光学式のメーカーさんによってそれぞれ制御の流儀が違います。 それらを吸収しつつステラドームプロとしてのオペレーションが統一できるようにシステムの大改良を頑張りました。
リニューアル式典は3月2日に開催され、最新鋭のシステムが市民のみなさまにお披露目されました。
和歌山のお気に入り
土曜日に現地作業、日曜日にお休みをもらったので、ホテルからすぐ近くの「ふくろうの湯」へ行きました。岩盤浴でひたすら汗をかいたり温泉でまったりしていたら、5時間も経っていた思い出。温泉+岩盤浴の贅沢コースおすすめです。
3月・4月
和歌山案件から間もなく、次は長野県松本市にある松本市教育文化センターさんにステラドームプロを新規納入しました。光学式やデジタル式が新しくなっただけでなく、座席等や音響も一新。光学式は株式会社五藤光学研究所製「オルフェウス」、デジタル式はお馴染みの「ステラドームプロ」です。なんと、こちらも初の事例です!
かみやまさん、和歌山に引き続きコメントをお願いします!
3大メーカー連動総仕上げの松本戦。和歌山同様、気合を入れて頑張りました。たかのさんが居たのでシステムの調整に集中することができたよ。(よいしょ)
ありがとうございます・・・!
松本のお気に入り
松本は今まででいちばん出張した回数が多く、色々ご紹介したいところはありますが、松本市街から見える朝のアルプス山脈は本当に絶景でした。お気に入りグルメは、松本駅近くにある「からあげセンター」。ひとつひとつのからあげがとても大きく、身もジューシーでお酒との相性が最高です!松本駅含め長野県に8店舗あるそうなのでぜひ食べに行ってみてください。
7月
7月は大忙しで、神奈川工科大学厚木市子ども科学館さん、上田創造館さん、山梨県立科学館さんの3つの施設でリニューアルをしました。本当に有難い限りです。リニューアル作業をする度に驚くことはプロジェクターの進化です。旧システムでも十分だと思っていても、入れ替えてみると見違えるくらいに映像が綺麗になります。全天周映像の迫力が増すことはもちろん、青空がより深みのある青空らしくなり、星の色の違いなどもはっきりとわかるようになるので「自信を持って解説できるようになった」とのお声をいただきました。
9月
9月はステラドーム初の茨城進出!茨城県つくば市にあるつくばエキスポセンターさんにて「ステラドームモバイル」の納品をいたしました。つくばエキスポセンターさんはなんと5m、7m、10mの3つの大きさのエアドームを所持されていて、大平技研製の光学式プラネタリウム「MEGASTAR-ZERO」を使いつつ、学習投影でもっと幅広い演出ができればということで、ステラドームを導入していただきました。
つくばのお気に入り
つくばエキスポセンターさんへは、つくばエクスプレスに乗車して行きました。社会人になり、各地へ出張するようになってから特急列車にじわじわ魅了されてきているのですが、車窓から見える筑波山はとっても素晴らしかったです。
1月、3月、4月、7月、9月とスケジュールをお話しましたが、な~んかやけに飛び飛びですよね。実はそれ以外の月はプラネタリウム事業部のお仕事と並行して別のお仕事をしていたのです。これこそが前回の記事でお話した仕事が多岐にわたりすぎるという言葉の核心の部分ですが、第2回はここまでとしまして、第3回でお話させていただきましょう! お楽しみに!