星空年鑑や天体カレンダーなどには「月の出」「月の入り」の時刻が記載されています。
先日、天体カレンダーを眺めていた知人のY氏があることに気づきました。
「ちょいと、おめぇさん。この日は月は沈まないのかい?」
たしかに、他の日は「月の入り」の時刻が書かれているのに、彼が指さした日はこれが「–:–」となっています。これはいったい、どういうことなのでしょうか。
もしも落語の世界なら――
「そいつは、あたりめぇだろうよ。その日はお月さんが沈まねぇわけだから、明くる日には、もひとり、お月さんが顔を出して、お空に2つ仲良く並ぶのよ」
「そんな、ばかな」
と、こんな会話が繰り広げられるのでしょうが、実際はちゃんとした理由があります。
たとえば、2024年4月14日・東京の月の出・入りに注目してみましょう。月の出の時刻は「8:55」となっていますね。しかし、月の入りの時刻は書いてありません。
月の出 | 月の入り |
8:55 | –:– |
それでは、ステラナビゲータで月の出のちょうど1時間後のようすを確認してみましょう。
朝の明るい空に、月齢5.3の月がうすぼんやりと昇ってきました。次に、この月を追いかけて2024年4月14日23時59分まで時間を進めてみましょう。
ああっ!もうあと1分で4月14日が終わるというのに、まだ月が地平線の上に残っています!あと1分では沈みそうもありません。月が沈むまで、もう少しだけ時間を進めてみましょう。
月の入りの時刻は翌日4月15日の0時30分になってしまっています。つまり、4月14日に月が沈む時刻が存在しないので、カレンダーにも書くことができないのですね。
言葉だけで「月が沈まない日がある」と聞くと不思議な感じがしますが、このように月と時間を追いかけてみると簡単な理屈ですね。わたしたちから見える月の位置は時々刻々と変化し、また月の出・月の入りの時刻も日々遅くなっていきます。
おやおや、Y氏がまた新たな発見をしたようです。
「ちょいと、おめぇさん。この日は月は昇らないのかい?」(月の出:–:–)
「この日は月は南中しないのかい?」(月の南中:–:–)
「旅人から本当に何日間も月が沈まねぇのを見たなんて怖ぇ噂、聞いちまったよぉ……」(さて、地球上のどの場所のどんなタイミングでしょうか?)
そんなY氏にはステラナビゲータを手渡して、こう言ってあげましょう。
「尽きねぇ(月無ぇ)悩みはこれで解決だ!」
お後がよろしいようで。
関連リンク
- 2024年4月14日(日)の天文現象カレンダー(アストロアーツ)
- ステラナビゲータ12 製品ページ
- ビクセン 天体カレンダー 2024(アストロアーツ オンラインショップ)
- 「月の出」「月の入り」がない日があるのはなぜ? | 国立天文台(NAOJ)